2025-09-25 コメント: 1件 ▼
安田純平 旅券発給拒否取り消し確定
安田純平=フリージャーナリストは、旅券の再発行を拒否した処分の取り消しを求めた訴訟で、2025年9月24日付の最高裁決定により国の上告が退けられ、判決が確定しました。 2019年に安田さんが旅券の再発行を申請した際、当局はトルコの入国禁止措置を根拠に発給を拒否しました。 これに対し、安田さんは「渡航の自由」を侵害するとして提訴しました。
最高裁が上告退け 判決確定
安田純平=フリージャーナリストは、旅券の再発行を拒否した処分の取り消しを求めた訴訟で、2025年9月24日付の最高裁決定により国の上告が退けられ、判決が確定しました。対象は、帰国後に観光目的で旅券再発行を申請したところ、当局が発給を拒否した事案です。裁判所は一、二審の判断を是認し、処分は違法として取り消されました。
背景には、2015年のシリアでの拘束と2018年の解放があります。2019年に安田さんが旅券の再発行を申請した際、当局はトルコの入国禁止措置を根拠に発給を拒否しました。これに対し、安田さんは「渡航の自由」を侵害するとして提訴しました。2025年1月30日の東京高裁判決は一審に続き違法と判断し、今回、最高裁がこれを確定させました。
二審の判断は、トルコの入国禁止を理由に、トルコや周辺国のみならず、他地域への渡航まで広範に制限した点を問題視しました。判断は、目的に照らしてやむを得ない限度を超えており、当局の裁量権を逸脱するとの結論でした。最高裁の確定により、この枠組みが最終的に確認された形です。
旅券法の適用範囲と裁量統制
旅券法は、渡航先の法規で入国が認められない場合などに発給制限を可能としています。ただし、その運用は個別事情の精査と比例原則を前提にします。裁判所は、入国禁止国以外への渡航まで包括的に禁じる措置は、目的適合性と必要最小限性の両面で疑義があると整理しました。
判決確定は、行政裁量に対する司法の統制が働いた例です。危険地や紛争地への取材・渡航の現実と、渡航の自由という権利の調和を図るうえで、広すぎる一律制限は許容されないというメッセージになります。政府の安全保障配慮は重要ですが、制限は具体的根拠と限定性を伴う必要がある、という基準が可視化されました。
さらに、裁判所は手続の面でも、理由の明示、反論機会、期間設定などの適正手続を求めています。対象国の範囲や期間が曖昧なままでは、権利制限が漫然と長期化するおそれがあるからです。今回の確定は、審査の透明性と説明責任の向上を促す契機になります。
安田純平さんの主張と意義
安田さんは、拘束経験を踏まえた上での再発行申請が、広範な渡航禁止によって妨げられたと主張してきました。裁判所は、取材や移動の自由に直結する影響の大きさを踏まえ、過度の制限を退けました。確定判決は、今後の発給実務や運用通知の見直しを促す可能性があります。
判決の含意は、危機管理と権利保障の再設計です。危険地への渡航に関する個別審査、期間や地域の限定、代替手段の検討を組み合わせることで、必要な安全配慮と報道の自由の両立を図れます。安田さんのケースは、そのバランスの取り方に具体的指針を与えました。
世論の反応も割れています。権利保護の観点から評価する声がある一方、再発行に慎重な管理を求める意見もあります。
「上告棄却は当然。不当に広い制限は改めるべきだ」
「安全保障上の配慮は必要。個別審査を徹底してほしい」
「取材や報道を萎縮させない線引きが重要だ」
「入国禁止国の迂回を前提にしない運用が必要だ」
「判断基準を公開し透明化してほしい」
今後の実務と報道の現場
当局は「決定を踏まえて適切に対応する」との姿勢です。実務面では、発給拒否の要件と審査手続の明確化、対象国の範囲設定、期間や更新条件の限定など、比例原則に即した見直しが求められます。個別事情の聴取や不服申立ての実効性確保も論点です。
報道の現場では、紛争地取材の必要性と安全確保の両立が引き続き課題です。保険、危機管理計画、現地ガイドの手配などの自己規律を強めつつ、行政側は過度な一律制限を避ける。今回の確定判決は、そのバランスを社会全体で考える契機になります。