2025-09-25 コメント投稿する ▼
岩屋毅外相が主導:FMCT交渉開始へ日本の核外交力
日本はFMCTを核軍縮政策の柱と位置づけ、交渉開始を早期実現すべき課題としてきた。 第三に、全会一致を求めるジュネーブ軍縮会議の制度上の制約が交渉開始を阻んでいる。 2024年には「FMCTフレンズ」が立ち上げられ、日本が中心となって核兵器国と非核国を結びつける枠組みを作った。 今回の外相会合はその後初めての閣僚級集会であり、日本が「交渉開始の触媒」として位置づけられた場でもある。
外相会合での日本の役割強調
岩屋毅=現職外務大臣は、2025年9月24日(日本時間25日未明)、ニューヨークの国連本部で開かれた「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズ外相会合」に出席した。参加は核保有国と非保有国を含む12か国で、米国はオブザーバーとして加わった。岩屋氏は冒頭で「対話と協調を通じて、政治的意志をFMCTの即時交渉開始に結実させる」と述べ、日本が主導的な役割を果たす決意を示した。討議の末、共同声明が採択され、ジュネーブ軍縮会議に対して条件をつけず交渉を始めるよう求める内容が盛り込まれた。
岩屋氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発や一部国による核戦力増強を念頭に、厳しい国際環境を指摘した。また「30年にわたる停滞を終え、新章を切り拓く」と表明し、被爆国の立場から核兵器廃絶への責任を訴えた。
市民・ネット上の反応
外交姿勢に対し、市民やネット上からもさまざまな反応が寄せられている。
「政府が主導して交渉を動かせるなら期待したい」
「本気なら核保有国の圧力に屈せず進めてほしい」
「ただのショーでは意味がない」
「なぜ既存物質除外なのか疑問」
「他国も巻き込める外交力を示せるか」
こうした声は、日本の取り組みに期待しつつも懐疑的に見る世論の存在を浮き彫りにしている。
FMCTとは何か/交渉の停滞要因
FMCT(カットオフ条約)は、核兵器用の高濃縮ウランやプルトニウムといった核分裂性物質の生産を禁止する枠組みである。これにより核兵器の量的拡大を防ぐことが目的とされる。日本はFMCTを核軍縮政策の柱と位置づけ、交渉開始を早期実現すべき課題としてきた。
しかし交渉は長年進展していない。障害は大きく三つある。第一に、禁止対象を「既存物質まで含めるのか」「将来生産に限定するのか」で意見が割れている。第二に、検証制度をどの程度厳格にするかが議論を難航させている。第三に、全会一致を求めるジュネーブ軍縮会議の制度上の制約が交渉開始を阻んでいる。
専門家は「禁止・検証・定義・制度設計が絡み合っているため、部分的妥協では解決しない」と指摘している。交渉の目的設定段階で共通認識を持つことが不可欠とされる。
日本外交のこれまでと今回の展開
日本はこれまで作業文書を提出するなど、交渉準備を積極的に進めてきた。2003年や2006年には条約の範囲や検証のあり方について提案を示し、議論をリードした経緯がある。
2024年には「FMCTフレンズ」が立ち上げられ、日本が中心となって核兵器国と非核国を結びつける枠組みを作った。参加国には欧米諸国や新興国が含まれており、幅広い支持を集めることが狙いだった。
今回の外相会合はその後初めての閣僚級集会であり、日本が「交渉開始の触媒」として位置づけられた場でもある。共同声明には「前提条件なしに直ちに交渉を始めよ」と明記され、国際社会への圧力を高める意味を持った。ただし、声明だけで交渉が動く保証はなく、制度的な壁は依然として厚い。
展望と課題
外相会合を契機に交渉開始の機運が高まる可能性はあるが、課題は残る。核保有国が協調姿勢を示すかどうか、条約の対象範囲や検証方式をどう調整するかが最大の焦点である。また、日本自身も外交資源や国内世論との調整が不可欠であり、他の外交課題との兼ね合いもある。
それでも日本は被爆国として道義的責任を負い、国際的な信頼もある。被爆者の声や国際世論を活かし、実効性ある交渉の推進役となれるかが試されている。今回の外相会合は、その可能性を広げる第一歩となった。