2026-03-10 コメント投稿する ▼
反撃能力長射程ミサイル初配備へ、静岡・熊本に1月31日配備決定で防衛政策転換
防衛省は2026年3月10日、有事の際の反撃能力になり得る長射程ミサイルを、2026年1月31日に陸上自衛隊の富士駐屯地と健軍駐屯地に初配備すると発表しました。 富士駐屯地には島嶼防衛用高速滑空弾が、健軍駐屯地には12式地対艦誘導弾能力向上型が配備されます。 一方、健軍駐屯地に配備される12式地対艦誘導弾能力向上型は、射程約1000キロを誇ります。
富士駐屯地に配備されるのは地上発射型の高速滑空弾です。グライダーのように変則的な軌道を描き、迎撃されにくいとされています。射程圏は数百キロに及び、富士駐屯地で試験が進められてきました。
一方、健軍駐屯地に配備される12式地対艦誘導弾能力向上型は、射程約1000キロを誇ります。熊本からは中国大陸沿岸部が射程圏内に入ることになります。2026年3月9日未明には、発射装置などを載せた輸送車両が富士駐屯地から健軍駐屯地に到着していました。
新たな装備品の運用と今後の配備計画
陸上自衛隊にとって全く新しい装備品となるため、富士駐屯地の火力戦闘の教育部隊である特科教導隊で実践的な運用を図るとともに、効果的な教育方法も検討していきます。防衛省は2026年度中に陸自の上富良野駐屯地と、えびの駐屯地にも配備する方針です。
敵の射程圏外からミサイル発射拠点などを攻撃する長射程ミサイルについて、防衛省は国産と海外製の計8種類の取得を計画しています。2027年度には艦艇や戦闘機から発射するタイプの運用も始まります。護衛艦「てるづき」や航空自衛隊百里基地に配備予定のF-2能力向上型戦闘機への搭載が想定されています。
陸自は高速滑空弾の射程を約2000キロまで伸ばす開発も進めています。将来的には潜水艦発射型の開発も検討されており、日本の防衛体制は大きく変わろうとしています。
地元住民の懸念と説明不足への批判
配備先となる地元からは、懸念の声も上がっています。熊本市の大西一史市長は2026年3月9日、記者団の取材に「もう少し可能な限りの情報提供があるべきだ」と不快感をあらわにしました。
健軍駐屯地は住宅地の真ん中に位置し、半径2キロ圏内に市民病院や保育施設、小中高校、大学など教育施設が57カ所あります。長射程ミサイルの配備によって健軍駐屯地が対中国攻撃の拠点になれば、攻撃される対象にもなり、その場合は市民に被害が及ぶことが懸念されています。
「ミサイル配備で攻撃の標的にされるんじゃないの」
「説明会もなしに勝手に配備するなんてひどすぎる」
「子供たちが通う学校のすぐ近くなのに不安しかない」
「抑止力っていうけど、かえって危険を招くだけでは」
「住民の声を聞かずに進めるのは民主主義じゃない」
九州防衛局は2026年3月17日に大西市長や熊本県の木村敬知事、地元議員らを対象にした装備品展示を実施すると発表しました。しかし、地元住民向けの説明会や装備品展示は現時点で予定されていません。
反撃能力をめぐる議論
政府は2022年12月に閣議決定した国家安全保障戦略など安全保障関連3文書で、反撃能力の保有を明記しました。反撃能力とは、敵国のミサイル発射基地などを攻撃できる能力のことで、政府が従来「敵基地攻撃能力」と呼んでいたものです。
政府は「相手からミサイルによる攻撃がなされた場合、ミサイル防衛網により飛来するミサイルを防ぎつつ、相手からの更なる武力攻撃を防ぐために、我が国から有効な反撃を相手に加える能力」と説明しています。北朝鮮や中国の軍事的脅威が高まる中、迎撃のみに頼る防衛では不十分との判断です。
一方で、弁護士会などからは憲法9条違反との指摘も出ています。これまで政府は、自衛のための必要最小限の実力を保持することは憲法9条2項の「戦力」に該当しないとして、自衛隊は合憲であるという立場をとってきました。しかし、反撃能力の保有は平時においても他国に軍事的脅威を与える攻撃的兵器であり、従来の専守防衛の枠を超えるのではないかとの懸念があります。
また、反撃能力を保有することで抑止力が向上するという主張に対しては、際限のない軍拡競争に陥る可能性も指摘されています。ひとたび反撃能力を発動すれば、相手国によるさらなる反撃を招き、戦争の惨禍をもたらす結果になりかねないという意見もあります。
防衛省は「抑止力と対処力の要」として配備を急いでいますが、国民的な議論が十分になされたとは言い難い状況です。今後、配備が進むにつれて、さらなる議論が必要になるでしょう。
反撃能力を担う長射程ミサイルの初配備は、日本の安全保障政策の大きな転換点です。地元住民の懸念に応え、十分な説明を行いながら、国民全体で議論を深めていくことが求められています。