2025-06-11 コメント投稿する ▼
医師不足が限界に達した与那国町、診療所を県に移管要請 「無医島化」への危機感強まる
最西端の離島で起きている“医療空白”の危機
日本最西端に位置する沖縄県与那国町が、深刻な医師不足の危機に直面している。11日、与那国町議会は同町の診療所について、県が直接運営する「県立へき地診療所」として移管するよう求める意見書を県庁および県議会に提出した。町議会の与野党議員が県庁を訪れ、県の保健医療介護部や土木建築部、県議会副議長と面会し、切迫する現状と要望を直接訴えた。
これまで町の医療を支えてきたのは、地域医療振興協会の派遣医師による診療体制だった。しかしその協会も、医師不足を理由に2025年3月末をもって撤退する方針を示している。これにより、町が事実上の「無医島」へ転落する危険性が現実味を帯びてきた。
与那国町診療所が担ってきた役割と、その喪失の意味
与那国島は人口約1600人の離島で、医療機関は町立診療所1カ所のみ。那覇本島への移動には飛行機で1時間以上かかるため、日常の医療提供は島内で完結させる必要がある。
現在の診療所は、医師1人が常駐し、外来・救急・高齢者医療など地域医療全般を担っている。夜間や休日の緊急対応も1人の医師に依存する体制が長年続いており、その過酷な勤務環境は深刻な医師確保の障害となってきた。
さらに、医療スタッフが1人欠ければ即座に地域医療の崩壊につながる脆弱な状況だ。高齢化が進む離島住民にとって、継続的な医療サービスは命綱であり、それが途切れることの社会的影響は計り知れない。
「病気になっても飛行機が飛ばなければどうしようもない」
「本島と同じ医療制度を当てはめるのは無理がある」
「医師1人で島全体を支えるなんて限界だよ」
「診療所がなくなったら、出ていくしかない」
「このままだと災害時も医療崩壊が一瞬で起きる」
こうした声が町民から相次ぐなか、町議会は緊急の臨時議会を開催し、医療体制の抜本的見直しを迫ることとなった。
県への“移管要請”は最後の選択肢
町議会が今回採択した意見書では、来年度以降、島内に医師が常駐しなくなる可能性を重く見て、「無医地区」に陥る懸念を表明。離島である与那国においては、町単独での医療体制の維持は限界に達しており、県が直接的に関与する体制への移行が不可欠と強調した。
具体的には、県内16カ所に設置されている「県立へき地診療所」と同様、県が事業主体として医師の常駐・派遣を担う仕組みへの移行を求めている。これは、沖縄県が定めた第8次医療計画でも触れられている離島医療体制の強化方針と整合性がある。
町側は事前に知事または副知事との面会を希望していたが、対応したのは部長級職員にとどまった。これに対して町議会の一部からは、「県の危機感が薄い」との不満も聞かれている。
「与那国の医療崩壊は、他の離島にも波及する問題だ」
「部長対応ではなく、知事自ら現地を見て判断すべき」
「行政の縦割りが、命を救う行動を遅らせている」
「なぜ今まで放置してきたのか」
「今こそ“地方創生”の本気度が問われている」
「国境の島」与那国の現実と国家の責任
与那国島は、台湾まで約110kmという日本の最西端に位置する国境の島でもある。防衛上の重要性からも注目を集める一方で、肝心の住民の生活インフラ、特に医療体制が崩壊の危機に瀕していることは看過できない。
地域を守るのは軍事力だけではない。日常の安心、安全、そして命を守る基盤がなければ、そこに住む人は減り、国境が空洞化する。県が主導し、さらに国が本気で離島医療の再構築に取り組まなければ、地方創生どころか地方消滅が現実になる。
今回の与那国町議会の行動は、単なる“要望”ではなく、「生きるための最後の声」でもある。行政は今すぐ、制度や縦割りの壁を超えて対応すべきときに来ている。