2025-12-03 コメント投稿する ▼
ずさんな経費を追認しかねないアジア大会特措法成立――税金投入の前提となる透明性の確保が求められる
このような状況は、過去の大規模スポーツ大会における会計不透明と批判された例と酷似しており、国民・県民の税金がどのように使われるかを管理・監視する仕組みが不十分だという懸念が強まっています。 ただし、それらの大会では、開催前からある程度の情報公開や説明責任が果たされており、今回と同じような不透明性が問題になったわけではありません。
成立した特措法とその背景
2025年12月3日、参議院本会議で、愛知県と名古屋市が共催する来年9月開幕のアジア大会およびアジアパラ競技大会の経費の一部を国が補助できるようにする「特別措置法」が、自民党・日本維新の会・立憲民主党・国民民主党・公明党・参政党の賛成多数で可決・成立しました。これにより、これまで国が大会運営費を負担しないとする閣議了解があった状態から、国費投入の法的根拠が与えられることになります。過去、特措法によって国の補助を明記した例は、1964年の東京オリンピックと1972年の札幌冬季五輪のみとされ、アジア大会規模で国補助を明言するのは前例がありません。
この成立にあわせ、政府は補正予算案で約136億円を補助に振り向ける方針を示しています。補助対象には、パラ大会経費や警備費などが含まれ、国の財政支援の実質的な裏付けが整う見込みです。
膨張する大会経費と情報の不透明性
問題視されているのは、大会費用の急激な膨張と、その根拠を巡る情報公開の不透明さです。大会の当初見積もりは約1050億円でしたが、最近の組織委員会の試算では総額が約3700億円に膨らむとの報道があります。つまり、当初想定の3倍以上に増加しているという事態です。
にもかかわらず、大会組織委員会や開催自治体は詳細な経費の内訳や積算根拠を公表していません。招致決定から9年が経過しているにも関わらず、これまで一度も情報公開がなく、どの項目にいくらかかるのか市民には見えない状態です。
このような状況は、過去の大規模スポーツ大会における会計不透明と批判された例と酷似しており、国民・県民の税金がどのように使われるかを管理・監視する仕組みが不十分だという懸念が強まっています。
吉良氏らの批判――「ずさんな計画を追認か」
吉良よし子議員(日本共産党)は、文部科学委員会の質疑で、大会経費の不透明性と、経費の膨張に対する説明責任の欠如を厳しく指摘しました。2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは、毎年経費情報が公表されていたのに対し、今回は一度も明らかにされていない点を強調しました。
さらに、会場設営などを請け負う企業として契約されたGL events 社への疑念も示しました。GL events は大阪・関西万博で下請け企業への未払い問題を起こしており、このような過去の問題を抱える企業に630億円規模の契約を任せるのは危険だと警告しています。今回の特措法成立は、こうした「ずさんな計画」や「無責任な姿勢」を国が追認する恐れがあるとの批判です。
吉良氏は「国民の税金を投入するなら、詳細な実施計画を示し、説明と納得を得るべきだ」と訴え、透明性が確保されないまま支出が進むことを厳しく批判しました。
国の立場と背景――財政支援への転換
一方、法案賛成派や政府側は、近年の物価高騰や人件費の上昇、資材費の高騰など、招致時には想定できなかった経済状況の変化を理由に挙げ、国の財政支援が必要と主張しています。大会の安全確保や運営の安定を考えれば、追加支援はやむを得ないという見方です。実際、衆院段階でも補正予算案での支援金額確保が念頭に置かれてきました。
また、過去の大会で国費が使われた実例も根拠とされることがあります。ただし、それらの大会では、開催前からある程度の情報公開や説明責任が果たされており、今回と同じような不透明性が問題になったわけではありません。
市民目線――税金投入と納得の乖離
国民・住民の多くは、巨額の税金がどこにどう使われるのか、納得感を求めています。大会の成功や地域振興、文化・スポーツ振興は重要ですが、それが税金の無駄遣いになっては意味がありません。透明性のない計画を追認し、大量の国費が投入される危機は、民主主義や行政の信頼を損なう可能性があります。
今回の特措法成立は、法的には手続きをクリアしたとしても、「説明責任」「情報公開」「市民の納得」という視点を欠いたまま、国が税金を投入する危険がある――そうした警鐘として受け止めるべきです。