2025-06-27 コメント投稿する ▼
政府が「ガイドラインなし」と回答 海外先住民遺骨返還を巡る日本の人権後進性
海外先住民遺骨返還の「手続き不在」――政府の答弁が示す実態
石破内閣が6月27日に閣議決定した政府答弁書によって、海外先住民の遺骨返還を巡る日本政府の対応の不透明さが露呈した。これは、日本共産党の紙智子参院議員が提出した質問主意書に対するもの。紙議員は、海外先住民の遺骨返還にあたって行政文書やガイドラインの有無を問いただしたが、政府は「そのようなガイドラインは存在しない」と答弁した。
この答弁は、日本国内の先住民族であるアイヌの遺骨返還には明確な手続き文書――「大学が保管するアイヌ遺骨等の出土地域への返還手続きに関するガイドライン」が整備されていることと比較して、大きな差異がある。アイヌ遺骨返還には申請手続きの要件が明文化されているのに対し、海外先住民にはそれすらないのが現状だ。
「国内にはガイドライン、海外には放置…都合のいい二重基準」
「やましさがあるから行政文書を作らないのでは?」
「国際的な恥を晒してるようなもの」
「日本の研究機関は返還よりも所蔵に執着している気がする」
「盗んだものを返すのに、なぜガイドラインも謝罪もないの?」
東大・京大が返還したのは氷山の一角
報道によれば、東京大学と京都大学、そして国立科学博物館が収集・保管していたオーストラリアの先住民の遺骨10体が、6月12日にオーストラリア政府と先住民団体に返還されたことが明らかになった。また、昨年11月には、東京大学が米国ハワイの先住民の遺骨を返還していたことも確認された。
こうした事実は、長年にわたって日本の研究機関が「学術研究」を名目に、海外の先住民遺骨を不当に持ち出し、保存していた歴史を物語っている。いずれの返還も、あくまで研究機関の自主的な対応であり、政府の明確な方針に基づいたものではない。すなわち、日本政府は今なお、海外先住民に対する歴史的責任から距離を置いているのである。
アイヌ民族の遺骨返還も道半ば
日本政府の対応は、国内のアイヌ民族に対しても十分とは言い難い。明治期以降、多くの大学が研究目的でアイヌ民族の墓を盗掘し、遺骨を収集してきた。その多くは、本人や家族の同意を得ないまま持ち去られ、大学構内で保管されている。
だが、今日に至っても多くの大学は公式な謝罪を行っておらず、返還の取り組みにすら消極的な姿勢を見せている。北海道大学をはじめとした一部大学では返還が進められているものの、それはごく一部に過ぎない。
一方、政府は海外に持ち出されたアイヌ遺骨の数すら「把握していない」との見解を示しており、歴史的責任を曖昧にし続けている。
国際的な信頼と人権尊重が問われる時
先住民の遺骨を保管し続けるということは、その民族の尊厳や死者の権利を無視する行為である。国際的には、こうした遺骨の返還は民族的自決権や文化的回復の一環として扱われており、オーストラリアやアメリカでは国を挙げた返還が進んでいる。
日本政府がこのまま「ガイドラインなし」「数も不明」「大学任せ」の方針を貫けば、国際社会からの信頼を損ねるだけでなく、先住民の人権軽視という批判を免れない。
また、この問題は国民にとっても無関係ではない。研究機関に対する税金支出、文化財の倫理的保管、教育現場における人権教育のあり方など、問われるべき観点は多岐にわたる。
返還を求める動きは、単なる儀式ではなく、謝罪と回復の象徴であり、いまこそ政府が率先して制度整備に動くべきときである。