2025-07-28 コメント: 1件 ▼
八潮市道路陥没から半年 悪臭・騒音に苦しむ住民と補償遅延「前例がない」では済まされない現実
道路陥没から半年、八潮市は今も悪臭と騒音の中 住民の声届かぬ「5~7年の工事地獄」
「臭くて窓も開けられない」今も続く日常破壊
2024年1月、埼玉県八潮市で突如発生した県道の陥没事故から、28日で半年が経過した。トラックが転落するほどの大規模事故だったが、現場周辺では今も復旧作業が続き、かつての日常は戻らない。現場では悪臭が漂い、騒音と粉じんに耐える日々を住民たちは強いられている。
事故現場から半径200メートルの範囲は依然として立ち入りが制限され、連日の猛暑のなかでも工事は日曜以外、ほぼ休みなく行われている。下水がむき出しの状態で流れ込み、悪臭が住宅街に漂う。近隣住民は「窓を開けられない」「せき込む」「電気代が跳ね上がっている」と深刻な影響を訴える。
「臭気を感じると夫がせき込む。対応が遅すぎる」
「窓を開けられず、空調がフル稼働で生活費がかさむ」
「半年も我慢してるのに、まだ原因も補償も曖昧」
「騒音と臭いで眠れない日もある。体調を崩した」
「市も県も何もしてくれない。声が届かない」
15日に非公開で行われた市長との意見交換会には、約20世帯の住民が出席。「健康被害が目に見えないからこそ、もっと真剣に対応してほしい」と訴えが相次いだ。だが、県側の補償はまだ具体的に動き出していない。
「前例がない」では済まされない 補償に進展なし
埼玉県は、事故による住宅被害や商業的損失への補償に向け、4億円の補正予算を組んだ。しかし、担当者は「前例がない事故。どこまでを補償すべきか判断が難しい」として、半年が経ってもほとんど支払いが進んでいない。
第三者委員会による原因調査は現在も継続中で、知事の大野元裕氏は「責任が明確でない段階で、税金を支出するわけにはいかない」と慎重姿勢を崩していない。つまり、被害者たちは「誰の責任か」を明らかにされるまで、補償すら受けられないまま、日々の生活に耐えている。
こうした姿勢に対し、市民からは「先に補償、あとで原因の精査ではだめなのか」「国が出てきて調整すべき」など、行政の対応への疑念と苛立ちが広がっている。
地域経済にも打撃 八潮は“危ない場所”の烙印
事故の影響は生活だけではなく、地域経済にも及んでいる。八潮市商工会が2~3月に実施したアンケートによれば、回答した125事業者のうち6割以上が「売り上げが減少した」と回答している。
特に市外からの客に支えられていた飲食店などは「風評被害」に苦しんでいるという。市内の飲食店店長(47)は「“八潮は危ない”という印象が定着してしまった」とこぼす。事故後に水道使用の制限を求められるなど、営業面での打撃は大きい。
商工会の鈴木進事務局長も「補償はまだかという声が現場から多数寄せられている。これでは地域が持たない」と厳しい表情を見せた。
終わらない苦難、あと7年続く現実
県によれば、現場の「埋め戻し」作業は来年3月頃までに完了する予定だが、その後には2本目の下水管を埋設する「複線化」工事が控えており、すべての工事が完了するまでには「5~7年程度かかる」とされている。
つまり、周辺住民はさらに何年にもわたり悪臭・騒音・交通規制の影響を受け続けることになる。これまで半年、耐えに耐えてきた市民に対し、今のままでは「さらに7年我慢しろ」と突きつけることになりかねない。
復旧に時間がかかるのは仕方ないにしても、「責任の所在が分からないから」「前例がないから」という理由で補償や支援が後回しにされる構造こそが、住民の不信と怒りを高めている。
行政がまず示すべきは、責任よりも「寄り添い」であるはずだ。