2025-08-31 コメント投稿する ▼
京都市民の愚痴が尽きないインバウンド 経済効果の虚像と観光公害で政策見直し急務
京都市民が語るインバウンドの光と影
コロナ禍を経て観光需要が急速に戻った京都は、今やかつて以上に外国人観光客であふれている。今年の外国人観光客数は前年比53%増の1088万人を突破し、過去最高水準を更新する勢いだ。嵐山、清水寺、伏見稲荷といった人気スポットは終日混雑が続き、住民からは「もはや風景を楽しむ余裕すらない」との声が上がる。
観光による地域活性化は間違いなく京都の強みであるが、生活者にとっては「手放しで喜べない」現実がある。市民からの愚痴は後を絶たない。
「どこも混雑していて疲れる」
「バスは通勤に使えないほど混んでいる」
「ホテルばっかり建って、地元の人が住みにくくなっている」
「財政難なのに観光客優先に見える」
「結局は市民の負担だけが増えている」
SNSにも同様の声が並び、市が進める対策は「焼け石に水」と評されることも少なくない。
混雑する市バスと生活の不便
市民が最も強調するのは「市バスの混雑」である。スーツケースを抱えた観光客が大量に乗り込み、後方ドアから降りることさえ困難になる状況が日常化している。市内には鉄道で行きづらい観光地が多く、バス依存が続く一方、運転士不足で便数を増やすのは難しい。
京都市は2024年6月に観光特急バスを導入したが、市民からすれば根本解決には至っていない。生活の足が観光客に奪われているという不満は根深い。
ホテル乱立と住宅価格高騰
ホテル建設ラッシュも市民の生活に影を落としている。住宅地に突如として巨大ホテルが建ち、住民が抗議しても市が特別許可を出す事例が相次ぐ。仁和寺近くでは本来建設できない規模のホテルが特例で認可され、住民が訴訟を起こしたが、請求は棄却された。
「住宅価格が高騰して若い世帯が市内に住めない」「観光客向けホテルばかり増えて自分たちには意味がない」との不満が広がる。円安で外国人客が増えている現状に依存する都市計画は、将来の需要変動に耐えられるのかという疑問も出ている。
財政難と古都税の教訓
京都市は長年の財政難に苦しむ。宿泊税収入は伸びているものの、50億〜80億円の黒字は過去の赤字を埋めるには不十分だ。学生や高齢者が多く税収基盤が脆弱で、寺社仏閣が非課税であることも重くのしかかる。
過去には「古都税」を寺院から徴収しようとしたが、強い反発で頓挫した歴史がある。市民からは「寺社が観光客向けの専用バスを出すべきではないか」といった声も出ているが、制度化は難しい。
インバウンド政策は即刻見直しが必要
これまで政府や自治体は「インバウンドによる経済効果」を強調してきた。しかしその試算は観光客が落とす消費額ばかりを積み上げたものであり、観光による経済損失をほとんど加味していない。交通混雑で市民生活や労働生産性に損失が生じ、住宅高騰や生活インフラへの負担が拡大している実態は無視されている。
プラス面だけを切り取った数字を根拠に政策を進めるのは極めて危うい。実際に京都では、インバウンドの経済的メリットが住民に届かず、「観光公害」ばかりが増えているのが現状だ。
観光都市としての国際的ブランドを守りつつも、今の政策をただ続ければ地域社会の疲弊が進む。インバウンド施策は即刻見直し、市民生活と観光の調和を第一に据えた制度設計が急務である。