2025-10-23 コメント: 1件 ▼
山本太郎「消費税廃止・5%減税」訴えで浮上する財政構造の壁
といったら、当然、消費税の廃止です」と明言しました。 少なくとも5%に減税であるならば、私たちは乗れる」と言い切りました。 こうした状況下で、「消費税廃止」「5%減税」という主張は、税収の穴をどう埋めるかという観点から極めてハードルが高いものです。 さらに、国際格付け機関からも「消費税を刈り引く場合、その規模・継続性が日本の格付けに影響を及ぼす」として、慎重な見方が示されています。
「消費税廃止」掲げる 山本太郎代表、現実とのギャップ浮き彫り
10月21日、れいわ新選組の代表、山本太郎氏は会見で「何を実現したいか?といったら、当然、消費税の廃止です」と明言しました。そのうえで「廃止が無理ということであるならば、当然、減税です。少なくとも5%に減税であるならば、私たちは乗れる」と言い切りました。
山本氏はさらに、「国民生活の底上げ。そのために消費税の廃止。少なくとも5%に減税ならば私たちは乗れる。それに加えて現金給付10万円くらい必要」とし、購買力を回復させるため「国から軍資金を渡す必要がある」と主張しました。
この発言は、少子高齢化が進み、景気低迷と物価高に苦しむ家庭に向けた訴えとして注目される反面、財政基盤が脆弱な現状を見れば、実現可能性に疑問の声も上がっています。
消費税10%の重みと減税・廃止の壁
現在、日本の消費税率(標準税率)は10%、飲食料品および新聞等に軽減税率8%が適用されています。
また、この税収は国の一般会計歳入の約22%を占め、国税収入の中では法人税・所得税と並ぶ「基幹税」とされています。
こうした状況下で、「消費税廃止」「5%減税」という主張は、税収の穴をどう埋めるかという観点から極めてハードルが高いものです。実際、専門家からは「消費税率の引き下げは、税収減による財源悪化を招き、景気刺激効果も一時的にとどまる」との指摘があります。
さらに、国際格付け機関からも「消費税を刈り引く場合、その規模・継続性が日本の格付けに影響を及ぼす」として、慎重な見方が示されています。
つまり、山本氏の掲げる主張は、言葉として刺さるものの、財政構造上・制度設計上の壁が非常に大きいと言わざるを得ません。
政治的影響と「ポピュリズム外交」的構図
山本氏の発言には、「選挙で掲げた人参をぶら下げただけだった」と現行政権・野党双方を痛烈に批判する言葉も含まれています。彼は「2024年の衆議院選挙のときには、各党、消費税の減税を訴えていた。しかし国会で政府に強く求める野党はほとんどいなかった。詐欺師ですね」と述べました。
このような「弱者支援・減税・給付金」といった政策訴求は、ポピュリズム的な政治手法とも指摘され得ます。財政持続性を犠牲にして短期的な人気を得る「財政ポピュリズム」の構図が、今回浮き彫りになっています。
また、現政権側も減税について否定的な姿勢を明らかにしており、6月の報道では与党の首相が「消費税の引き下げは考えていない。影響を受けやすい世帯への支援を優先する」と述べています。
このような構図の中では、減税・廃止という言葉が選挙公約としては強い訴求力を持つ一方で、実行段階では政策的・財政的制約に直面するという現実も見逃せません。
「れいわ」の位置づけと政権への影響
れいわ新選組は2019年4月1日に設立され、消費税廃止を旗印のひとつとして掲げる政党です。今回の山本氏の発言は、あらためて同党の基本軸を再確認するものと言えます。
しかしながら、日本の現実の政局を見たとき、与党・野党を問わず、消費税維持の方向が強いこと、そして、れいわが単独で政策実現を担えるだけの議席・財政的体力を持っていないことが明らかです。特に、主張が与党と「ドロ船連立政権」を組もうという姿勢では成立しづらく、連立先としての選択肢や影響力を改めて問われます。
さらに、山本氏が「この先、地獄しかないんだぜ。カオスしかないんだぜ」という強烈な言葉を使ったところからも、現在の政権運営・経済運営に対する深い危機感と不信感が透けて見えます。
記者としての視点:主張の実現可能性と課題
山本氏が掲げる「消費税廃止」あるいは「5%減税」は、言葉としてはわかりやすく、国民生活の切実な声を反映しているのも事実です。物価高・給与の伸び悩み・購買力の低下といった状況下では、こうした主張が支持を得る土壌があります。
しかしながら、実現可能性という点では極めてハードルが高いのも現実です。消費税が歳入の約2割以上を占める「基幹税」であり、これを削れば社会保障・医療・介護などへの財源が急減するからです。制度的な穴をどう埋めるか、代替財源をどう確保するかについての具体性が弱ければ、政策が絵に描いた餅に終わる恐れがあります。
また、減税・給付といった手法が「ポピュリズム的」と捉えられ、財政健全化を求める国際金融市場や格付け機関からも異なる反応が出ています。例えばムーディーズは「税率引き下げの範囲・継続性が日本の格付けに影響を与える」と警告しています。
最後に、政策を届ける「政党としての立ち位置」も問われます。れいわ新選組は消費税廃止を明確に掲げていますが、少数政党ゆえに単独で実行できる余地は限られています。既存政党との連携を模索する姿勢がないと、現状の議会構成では政策実現の可能性は低いと言わざるを得ません。
山本太郎代表の「消費税廃止」「減税5%」「給付10万円」という訴えは、国民の生活実感に響くものであり、物価高・購買力低下の中で強いメッセージ性を持っています。
しかしながら、財政構造、制度設計、議会現実、国際的な信用という観点から見れば、現実とのギャップは大きいという声が圧倒的です。
政治評論家・記者として言えば、こうした主張を正直に受け止めるならば、「実現可能性・実行計画・財源確保」が明示されない限り、政策は絵に描いた餅に終わる可能性が高いと強く指摘します。
特に、政策主張と政党としての実力が一致していなければ、支持だけを集めて終わるリスクを孕んでいます。
現状、消費税をめぐる議論は加速していますが、実行フェーズへと橋を架ける構案が欠落しており、今後はそこが焦点になるでしょう。