2025-12-08 コメント投稿する ▼
愛知県警、名古屋港モスクで多文化共生イベント 防犯・交通安全で外国人支援
こうした情報を共有することで、外国人住民にも日本での「日常の安全ルール」を理解してもらおうという意図が明らかだ。 名古屋港モスクだけでなく、同県には名古屋モスク などイスラム教徒向けの礼拝施設が存在し、外国人や多様な背景を持つ住民が利用している。
愛知県警がモスクで多文化共生イベント 実施へ
――多様な背景の住民と安全・共生をめざす
名古屋港モスクでの多文化共生イベント
愛知県警港警察署は2025年11月21日、名古屋市港区にある名古屋港モスク にて、多文化共生を目的としたイベントを実施した。礼拝に訪れた外国人などを対象に、防犯や交通安全についての説明を行い、「地域社会の一員として、安全で安心に生活してもらう」ことを目指した取り組みだ。
説明された内容は、交通事故の現状、自転車運転者に対する来年4月からの「青切符制度」の導入、自動車盗・自転車盗の被害防止など多岐にわたる。こうした情報を共有することで、外国人住民にも日本での「日常の安全ルール」を理解してもらおうという意図が明らかだ。
背景:なぜモスクで? 名古屋のイスラムコミュニティと多文化共生
名古屋港モスクだけでなく、同県には名古屋モスク などイスラム教徒向けの礼拝施設が存在し、外国人や多様な背景を持つ住民が利用している。
こうしたモスクは単なる宗教施設にとどまらず、地域のイスラム教徒や外国人コミュニティの集いの場、多文化交流の拠点ともなってきた。過去にも、礼拝者や訪問者向けに日本語・日本社会のルールの説明会などを開催する例が確認されている。
そうした背景を踏まえ、警察がモスクという「地域の外国人コミュニティが実際に集まる場」を選び、多文化共生と安全教育の両立を目的に動いたことは理にかなっていると考えられる。
イベントの意義と限界
この取り組みが持つ意義は明らかだ。まず、多文化共生を実践として示すことで、外国人住民にも「この地域で共に暮らす仲間」という認識を伝えることができる。さらに、防犯・交通安全の周知を通じて、外国人住民も地域のルールを理解し、自衛だけでなく地域の安全維持の一助になり得る。
しかし一方で、限界もある。モスクを訪れない外国人やイスラム教徒以外の外国人にはリーチできない。また、言語や文化的背景の違い――たとえば日本語説明・日本の制度の説明だけでは十分伝わらない可能性もある。そうした人々への包括的な支援には、これだけでは不十分である。
今後に向けて――包括的な多文化共生の必要性
今回のような警察主導のイベントは、多文化共生を社会実装するひとつのモデルになりうる。ただしそれは「始まりにすぎない」。地域社会としては、行政、警察、宗教団体、外国人支援団体などが連携し、言語支援、生活相談、教育支援、相談窓口の充実など、より広範で継続的な施策が必要だ。
また、警察が関与する形式に警戒感を持つ層もいるだろう。その懸念に対しては、「強制」ではなく「話し合い」「共生」「尊重」を基本とする姿勢を明示することが不可欠だ。
今回のモスクでのイベントは、多文化共生に向けたひとつの前進である。しかし、それを軸にして「外国人住民も含めた地域の安全・安心」「互いに尊重する地域社会の実現」を目指すには、もっと広く、丁寧な取り組みが必要だ。
「警察が分かりやすく説明してくれて助かる。日本のルールを知るのは大事」
「こういう場がもっと増えれば、安心して暮らせると思う」
「言葉が通じなくても、関係を築こうとする姿勢が大事だと思う」
「地域の一員として扱ってくれるのはありがたい」
「でもモスク以外の外国人にも同じ配慮を」
こうした声は、たとえ一部であっても、多文化共生の意識が地域に生まれつつあることを示す。警察や行政だけでなく、地域住民、外国人自身も含めた「共生社会」の構築に向けた対話がますます重要になっている。