2025-11-28 コメント投稿する ▼
百田尚樹氏が提案 西岡力氏を拉致担当首相補佐官に起用せよ
首相補佐官として任命してほしい」と主張しました。 しかし提案を受けた西岡氏は、翌29日、「首相補佐官にはならない」と明言しました。 西岡氏の辞退は、拉致被害者の家族会にも一定の配慮を示した形と受け止められています。 また、民間人を起用することには、情報網や北朝鮮との信頼関係といった“柔軟性”を活かせるという期待があります。
「西岡力氏を首相補佐官に」百田代表が提案
11月28日の参議院「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」で、百田尚樹代表は、救う会 会長の 西岡力 氏を、拉致問題を担当する首相補佐官として起用すべきだと強く訴えました。百田氏は「西岡氏は長年拉致問題に取り組み、北朝鮮とのパイプも持つ。首相補佐官として任命してほしい」と主張しました。時間の関係で政府側からの正式な答弁は得られませんでした。
百田氏によると、政府が「全力を尽くす」「手段を選ばない」という姿勢を示すならば、民間で拉致に通じた人物を政府の公式ポストに迎えるのが理にかなっているとのことです。民間人でも首相補佐官に任命できるとの過去の先例に触れ、「せめて補佐官にして希望の灯をともしてほしい」と訴えました。
西岡氏は即座に辞退――「民間の立場が役割」
しかし提案を受けた西岡氏は、翌29日、「首相補佐官にはならない」と明言しました。西岡氏は、これまでも在韓日本大使館専門調査員や編集者などを務め、朝鮮半島情勢に詳しい人物です。拉致問題解決のため長年尽力してきた経歴がありますが、本人は「これからも民間の立場で活動するのが役割だ」と語っています。また、現在の政権(高市早苗内閣)を支持していないわけではないが、あくまで「家族のそばにいることが自分の役目だ」と述べました。
西岡氏の辞退は、拉致被害者の家族会にも一定の配慮を示した形と受け止められています。公式ポストに就くことで家族会や被害者家族から距離ができることを懸念した言動だと見られています。
提案の背景と意味――なぜ「民間人起用」を訴えたのか
百田氏がこうした提案に踏み切った背景には、現在の拉致問題の停滞感に対する苛立ちと焦燥があるようです。日本では、政府認定拉致被害者のうち未帰国者の親世代で存命なのは、横田めぐみさんの母、横田早紀江さん一人となっています。
委員会で百田氏は「もし親世代が健在のうちに全ての拉致被害者の帰国がかなわなかった場合、政府はどのような責任を取るのか」と追及しました。これに対し、拉致問題担当大臣の木原稔氏は「われわれは帰国に向けて取り組んでいる。仮定の質問には答えられない」と述べるにとどまりました。百田氏にとっては、政府の姿勢だけでなく「実行力と覚悟」が問われる場として、この提案を位置づけたようです。
また、民間人を起用することには、情報網や北朝鮮との信頼関係といった“柔軟性”を活かせるという期待があります。過去の政治家起用だけでは動かせなかった交渉の現場に、いわば“当事者感覚”を持つ人物を置くことで、事態打開の糸口が見えるかもしれない――というのが百田氏の論理です。
なぜ民間人起用論が出るのか
拉致問題は、政治的・外交的な難しさだけでなく、被害者家族の声、情報の非公開性、交渉の機密性などが複雑に絡み合っています。こうした事情から、政府内部だけでなく、長年被害者支援を続けてきた民間人の経験と知見を生かすことで、新たな交渉の道が拓ける可能性があります。
特に北朝鮮との関係では、過去に外交交渉を担っていた担当者が交代したり、情報の断絶が起きやすいといった問題が指摘されています。被害者の声に真摯に寄り添ってきた民間人を、首相補佐官という責任あるポストに据えることで、交渉力と柔軟性、家族の信頼を同時に得られる――そんな期待が背景にあるのです。
しかしこの方式には限界もあります。政権と支援団体の距離感、政策決定のスピード、情報公開のあり方といった点で、摩擦が生じる可能性は否定できません。今回のように本人が拒否すれば議論にも留まらない。
にもかかわらず、この提案が国会で取り沙汰されたこと自体は、政府に対する市民の期待と疑問が入り混じっている証左といえます。
論点と今後の展望
この提案と西岡氏の辞退は、拉致問題解決の手法と政府の責任のあり方をあらためて問うものです。もし西岡氏のような専門家を政府の内側に取り込めないのであれば、民間と政府の“協調”でどう動き続けるのかが焦点になります。
一方で、民間→政府への起用というのは異例の人事であり、政権としてどこまで現実性を検討するかは不透明です。時間切れで答弁がなかったことから、真剣な検討が進むかは今後の政府の動き次第です。