2025-06-11 コメント投稿する ▼
大川原化工機えん罪事件で東京都が上告断念 高裁の違法捜査認定が確定へ
大川原化工機えん罪事件 東京都が上告断念へ 小池知事「真摯に受け止める」
冤罪(えんざい)として全国的に注目を集めた「大川原化工機事件」に関する損害賠償裁判で、東京都の小池百合子知事は6月11日、東京高裁が違法捜査を認定し東京都と国に約1億6600万円の賠償を命じた判決について、最高裁に上告しない方針を正式に表明した。これにより、高裁判決が確定する見通しとなった。
事件は、機械メーカー「大川原化工機」の社長らが、輸出規制違反の容疑で警視庁公安部に逮捕・起訴されたが、その後、証拠不十分などにより不起訴処分・無罪となった冤罪事件。捜査手法や手続きの適正さが厳しく問われ、国と東京都の責任を巡る訴訟へと発展していた。
東京高裁が違法性を断罪 「公安捜査に重大な瑕疵」
東京高裁は5月28日の判決で、「犯罪の嫌疑が成立していたとはいえず、捜査着手や逮捕・勾留には根本的な判断ミスがあった」と断定。とくに公安部による捜査が「合理的根拠を欠いた」「捜査機関としての義務を果たしていない」とまで踏み込んだ内容で、異例の厳しい司法判断となった。
この判決を受け、小池知事は11日の会見で「極めて重い判断であり、都として真摯に受け止めなければならない」と語り、上告を断念することを明らかにした。上告期限は同日が最終日だった。
被害者側「ようやく一区切り」 正義回復に向けた一歩
大川原化工機の元社長・大川原正明氏らは、2020年に「不正輸出」の嫌疑で逮捕され、およそ10カ月にわたって会社業務が停止、 reputational damage(風評被害)や経営的損失を被った。
その後、容疑が全くの誤認であったことが明らかになり、「何の証拠もないのに公安部が強引に逮捕した」として、国と東京都に損害賠償を求めて提訴。今回の判決確定により、長い闘いに一区切りがつくことになる。
被害者側の弁護団は、「判決の確定は、被害回復と名誉回復にとって重要な節目。だが同じような冤罪を繰り返さないための制度改革が必要だ」と訴えている。
「公安捜査の暴走を抑制せよ」制度的課題も浮き彫りに
今回の判決で問題視されたのは、公安部による捜査の在り方だ。本来、公安捜査は国家安全やスパイ行為などの重大犯罪を扱う専門部署だが、極端に解釈された法律適用や、誤認をもとにした令状請求など、基本的な法手続きが軽視されていたことが指摘されている。
司法がここまで明確に「違法捜査」と断じたケースは極めて珍しく、警察組織と検察の在り方そのものが問われている。
識者からは、「公安部の独自判断による捜査が国民の自由を侵す結果となった。捜査の透明性やチェック機能の強化が急務だ」との声も上がっている。
ネットでも上告断念に安堵と怒り
SNS上では、上告断念の報に対し、さまざまな反応が見られた。
「ようやく一件落着。でも何もかも失った人にとっては遅すぎる」
「都が上告しなかったのは評価。ただし警察と検察の責任は?」
「捜査側は誰も責任を取らないのか?本当に怖い話だ」
「これが民主主義国家の司法とは思えない」
「冤罪に対する補償制度と再発防止の体制整備が必要」
都が上告を断念したことで、行政側の誤りが確定した形だが、捜査関係者の個別責任や警察組織内での検証はまだ十分に行われていない。今後は、再発防止に向けた透明な調査と責任の所在を明確にする制度改革が求められる。