2025-10-07 コメント投稿する ▼
小池都政、公金で“グローバル子育て”推進 アグネス・尾木氏登壇イベントに波紋
小池都政が打ち出す“グローバルな子育て”路線は、地域中心の従来型教育から脱し、英語教育や国際的価値観を重視する方向へ転換を図るものです。 しかし、日本の文化や価値観を土台にしない“グローバル化”が果たして本当の国際教育と言えるのかという議論もあります。
小池都政、“グローバル子育て”を掲げた公金投入
東京都を率いる小池百合子氏(特別顧問・都民ファーストの会所属)は、11月8日に「未来を拓くグローバルな子育て 心を豊かにする読書」というイベントを都が後援・公金支援のもとで開催すると発表しました。歌手でエッセイストのアグネス・チャン氏と、都立図書館名誉館長で教育評論家の尾木直樹氏が登壇予定です。
東京都教育庁地域教育支援部によれば、この対談イベントは都立図書館の読書活動推進を目的とし、「グローバルな時代の教育・子育てに必要な“心を豊かにする読書”」をテーマに、経験談を交えて語る形式です。対象は小学生以上、募集定員はおよそ100名。運営受託業者は株式会社シャフトです。
都の令和7年度(2025年度)教育庁予算案では、「グローバルに活躍する人材を育成する教育」に約190億円が計上され、そのうち新規事業の「グローバル人材育成」に約11億円が充てられます。小池都政が掲げる“世界とつながる東京”を実現する柱の一つと位置づけられています。
“日本流”ではない子育て像、視線の重さ
小池都政が打ち出す“グローバルな子育て”路線は、地域中心の従来型教育から脱し、英語教育や国際的価値観を重視する方向へ転換を図るものです。これは、かつての「日本流のしつけ」「地域共同体で育てる」文化からの断絶を意味し、都政の方向性として象徴的な動きといえます。
一方で、公金を投入して特定の価値観を広める政策である点には疑問の声もあります。
教育や文化分野での“理念型支出”は、成果測定が難しく、効果が見えにくいのが現実です。参加者100名規模のイベントに税金を用いる妥当性、公平性、説明責任の欠如が問題視されかねません。
また、「グローバル教育」という言葉の曖昧さも論点です。単に英語力を高めることを指すのか、それとも多文化共生や国際理解の教育を意味するのか、都としての定義づけが求められています。
教育とアイデンティティのはざまで
東京都ではこれまでにも英語教育強化、海外交流プログラム、教員の国際研修を進めてきました。しかし、日本の文化や価値観を土台にしない“グローバル化”が果たして本当の国際教育と言えるのかという議論もあります。
教育関係者の一部からは、「日本語や日本文化の教育こそ心を豊かにする読書につながるのではないか」という指摘も上がっています。アグネス氏や尾木氏が語る「グローバルな子育て」とは、どの国の視点に立つのか、その中で日本の家庭や子どものアイデンティティをどう守るのか、都の説明は十分ではありません。
小池都政が推し進める“グローバル子育て”は、国際都市・東京の将来像を意識した挑戦であると同時に、公金の使い方としての是非が問われる政策でもあります。著名人を招いたイベントを象徴的に打ち出すことで、都政が「見せる教育」を優先していないかという批判も根強くあります。
都政が真に目指すべきは、海外文化の模倣ではなく、日本の知と文化を基盤にした“自立した国際性”の育成です。教育を通じた価値観形成に公金を使うなら、その目的と成果を都民に明確に示す責任が求められます。