2025-10-02 コメント投稿する ▼
東京都、潜在ケアマネ復職者に10万円支給 人材不足対策の効果と限界
東京都は、介護支援専門員の資格を持ちながら現場から離れている「潜在ケアマネジャー」の復職を後押しするため、奨励金の支給を始めた。 一つは、ケアマネとして働いた後に3か月以上離職している人が、都内で復職し6か月以上働いた場合。 この制度は、資格を持ちながら眠っている人材を掘り起こし、深刻な人材不足が続く介護の現場を支える狙いがある。
東京都が潜在ケアマネを呼び戻す狙い
東京都は、介護支援専門員の資格を持ちながら現場から離れている「潜在ケアマネジャー」の復職を後押しするため、奨励金の支給を始めた。都内で6か月以上働けば10万円を受け取れる仕組みだ。支給は1人1回まで。申請は来年3月31日まで受け付ける。
対象となるのは二つのケースである。
一つは、ケアマネとして働いた後に3か月以上離職している人が、都内で復職し6か月以上働いた場合。もう一つは、資格はあるが一度も実務経験のない人が、都内で新たに就業し6か月以上働いた場合だ。今年度に新規で資格証を交付された新人は除かれる。
この制度は、資格を持ちながら眠っている人材を掘り起こし、深刻な人材不足が続く介護の現場を支える狙いがある。
「10万円」で人は戻るのか
一見すると、10万円という金額は復職を後押しする強い動機になりそうだ。しかし、現場では「果たしてそれで足りるのか」という声も聞かれる。
ケアマネジャーの仕事は利用者の生活を支える要となるが、報酬は重責に見合わないことが多い。調整業務や書類仕事に追われ、時間外労働が常態化している事業所も少なくない。復職したとしても、働き続けられる環境が整っていなければ、結局は再び離職につながるおそれがある。
SNS上にもさまざまな反応が出ている。
「東京都が10万円支給するのは良いきっかけ。全国にも広がってほしい」
「でも10万円だけじゃ戻らないよ。働きやすい環境を作らないと意味がない」
「資格持ってるけどブランクが長い。サポート研修とかも一緒にやってほしい」
「制度はありがたいけど、続けられる職場づくりが先じゃない?」
「話題になったことで、ケアマネの現状に関心が集まるのは良いと思う」
金銭的なインセンティブを評価する声がある一方で、根本的な働き方改革の必要性を訴える意見が目立つ。
なぜケアマネが戻らないのか
潜在ケアマネが現場に戻りにくい理由は一つではない。
まず処遇だ。介護職員処遇改善加算の対象外となるケースもあり、収入は頭打ちになりやすい。責任の重さに比べると給与は低く感じられるという声が多い。
次に業務量だ。利用者や家族の相談、医療機関や施設との調整、急な対応、そして膨大な記録業務。どれも欠かせないが、同時並行で抱え込むには無理がある。
さらに、孤立感も問題だ。小規模事業所ではケアマネが1人しかいないことも多く、相談できる相手がいない。特に実務未経験者にとっては大きなハードルになる。
こうした事情を踏まえると、10万円の支給だけでは不十分で、復職した人が安心して続けられる仕組みを整えることが欠かせない。
他地域の取り組みと今後の課題
同様の制度は他県でも試みられている。千葉県は再就職準備金の貸付制度を設け、一定条件で返済免除とする方式をとる。神奈川県は復職支援研修や現場体験を組み合わせて、安心して働き始められる環境づくりを進めている。
東京都の施策は“まず一歩”として注目される。ただし持続性の課題は残る。申請期限を切る形では、一時的な呼び戻しに終わる可能性が高い。定着を重視した仕組みづくりが求められる。
将来的には、業務効率化やICT導入で事務負担を減らし、複数人で支えるチーム体制を広げることも欠かせない。専門職としての役割を正当に評価し、処遇やキャリアの道筋と結びつけることも、長期的な人材確保には不可欠だ。
東京都の制度は、介護人材不足に対する即効性ある対策といえる。だが、長く働ける環境整備や職務の魅力づけといった“次の段階”に踏み出せるかどうか。それが、この施策の本当の評価を左右するだろう。