2025-05-16 コメント投稿する ▼
労働施策推進法改定案が可決 ハラスメント禁止規定なしで物議、日本共産党が強く反対
労働施策推進法改定案が可決 ハラスメント禁止規定は未導入
労働施策推進法の改定案が16日、衆院厚生労働委員会で可決された。自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党の賛成多数で採択されたが、日本共産党とれいわ新選組は反対の立場を示した。
今回の改定案は職場におけるハラスメント対策を強化することを目的としているが、実際にはハラスメントの明確な定義や禁止規定が含まれていない点が批判の的となっている。
田村貴昭氏、改定案に強く反対
日本共産党の田村貴昭議員は反対討論で、改定案が国際労働機関(ILO)第190号条約の求める基準を満たしていないと指摘した。田村氏は「ハラスメントに対する包括的な定義も禁止規定もないままでは、被害者を守ることはできない」と強調。禁止規定を明確に設けるよう修正を求めた。
田村氏はまた、厚生労働省で働く非正規職員の多くが女性であり、その賃金は正規職員の半分にも満たない現状を「男女賃金格差の問題」として取り上げた。彼は「厚労省自らが男女平等の実現に取り組むべきだ」と訴えた。
非正規職員の待遇改善も議題に
田村氏は、特に厚労省の非正規職員の待遇改善を求めた。同省の正規職員のうち女性は3割だが、非正規職員では7割を占め、給与も正規職員の半分以下だという。田村氏はこれを「間接差別」と批判し、非正規職員の常勤化を進め、賃金格差を是正するべきだと訴えた。
厚労省の村山誠官房長は、非正規職員の常勤化に取り組んでいると述べたものの、その実績は乏しく、田村氏が指摘した3万6千人の非正規職員のうち常勤化されたのは1%にも満たないという。村山氏は「人事給与制度や定員管理に関する枠内で努力したい」と説明したが、具体的な目標は示されなかった。
中小企業支援と女性管理職の情報公表も議論
田村氏はさらに、中小企業における男女賃金格差や女性管理職の比率を公表する必要性を訴え、政府が支援に乗り出すべきだと主張した。これに対し、福岡資麿厚労相は「100人以下の企業に対しても努力義務を課している。中小企業向けのコンサルティングなど支援を継続する」と述べた。
しかし、田村氏は努力義務だけでは不十分であり、より具体的な対策が必要だと再度強調。特にILO条約の基準を踏まえた実効性あるハラスメント防止策を求めた。
実効性あるハラスメント対策が必要
労働施策推進法改定案は可決されたものの、ハラスメントの定義や禁止規定がないままでは、実効性が乏しいとの懸念が残る。田村貴昭氏の指摘通り、ILO第190号条約に準じた包括的なハラスメント対策を実現するには、今後も政府や厚労省の具体的な取り組みが求められる。賃金格差の是正や非正規職員の待遇改善といった課題も未解決のままだ。