2025-03-26 コメント投稿する ▼
「戦争PTSD」の実態解明を求める声──認定されなかった元兵士と家族の苦悩
戦場の記憶とPTSD
太平洋戦争では、日本軍が約700万人の兵士を戦地に送り出した。そのうち「精神病」や「神経症」と診断された兵士は67万人にのぼるが、治療を受けられたのはわずか1万人ほどだった。千葉県市川市にあった旧国府台陸軍病院には、物音に過敏に反応する、銃声の幻聴が聞こえる、戦場の悪夢を見るなど、PTSDの症状を示した患者の記録が残っている。しかし、当時の日本軍は軍内での精神疾患を公には認めておらず、こうした症状を抱えた兵士の多くが適切な治療を受けられないまま復員していった。
なぜいま調査が必要なのか
戦争の記憶は風化しつつあるが、元兵士たちやその家族が抱えてきた苦しみは消えない。2023年、日本共産党の宮本徹前衆議院議員の質疑をきっかけに、政府は戦争博物館「しょうけい館」(東京都千代田区)での展示のための調査を実施した。田村氏は、これを一歩前進と評価しつつも、戦傷病者と認定されていない元兵士への本格的な調査が必要だと主張した。
これに対し、福岡資麿厚生労働相は「しょうけい館での展示が始まった後、調査の実現可能性を含め検討したい」と答えた。
家族への影響と証言
戦争PTSDは、本人だけでなく家族の人生にも深い影響を与えている。元兵士の中には、戦争の記憶に苦しみながら、アルコールに依存したり、家庭内で暴力を振るったりする人もいた。2018年には「PTSDの復員兵と暮らした家族が語り合う会」が設立され、長年抱えてきた苦しみを分かち合う場ができた。
今後の課題
戦後約80年が経ち、当事者の多くは高齢となった。今のうちに実態を明らかにしなければ、貴重な証言が失われる可能性が高い。戦争の傷は、身体だけでなく心にも残るものだ。田村議員の求める調査が実現すれば、戦争の実相をより深く知る手がかりとなるだろう。
戦争による精神的影響の全容解明と、元兵士およびその家族への支援が、今後の大きな課題となっている。