2025-04-25 コメント投稿する ▼
SNS誹謗中傷を防げる社会に──兵庫県が進める人権啓発と“国籍”を問うメッセージ
共に生きる社会へ、多文化共生の現場からの声
兵庫県がSNS上の誹謗中傷を防ぐ取り組みに力を入れている。その一方で、県が関わる人権啓発機関が発行したジャーナルに掲載された「国籍は人を判断するのに重要か?」というテーマが、議論を呼んでいる。
SNSの誹謗中傷防止に本腰
斎藤元彦知事が会長を務める公益財団法人兵庫県人権啓発協会は、今年度、「SNS誹謗中傷等防止対策強化事業」を展開する。目的は、SNS利用者が他人を傷つける発信をしないこと、また他者の誹謗中傷を安易に拡散しないことへの理解を深めることにある。
県民に馴染みのあるプロスポーツチームとも連携し、街頭キャンペーンやオンライン啓発を展開。対象は若年層から高齢者まで幅広く、SNSが生活に密接に関わる今、ネットリテラシーの底上げを図る。事業費は340万円。キャンペーンは今後、県内各地で順次実施される予定だ。
県発行のジャーナルが投げかけた「国籍と人権」
話題となっているのは、同協会が発行する『ひょうご人権ジャーナル きずな』1・2月号。「国籍は人を判断するのに重要?」という問いを投げかける形で、複数の寄稿記事を掲載している。
巻頭には斎藤知事の挨拶があり、「躍動する兵庫へ、さらなる挑戦を」と題し、すべての県民と連携しながら、多様性を受け入れる地域社会づくりに意欲を示している。
「日本は単一民族国家ではない」――教授の視点
藍野大学の教授は「日本は単一民族国家か?」という問いに対し、「実際には、さまざまな民族が移動してきた終着点」と表現し、近代化の過程で画一的な「日本人像」が形成され、同化や排除が繰り返されてきたと指摘。そうした構造を「いじめ」にも似た社会的力学と重ね、小さいころから他者の違いを受け入れる意識を育てる必要があると訴える。
「"外国人"ではなく"〇〇さん"と呼び合える関係を、地域の中でどれだけ築けるかが、共生の鍵になる」とも語っている。
在日3世が語る「見えない壁」
もうひとつ注目されたのは、在日朝鮮人3世の方による寄稿。「外国人=よそ者=厄介者」という偏見が根強く残る日本社会で、賃貸住宅の契約時に「外国人は信用できない」と断られた体験を振り返っている。
また、国籍や在留資格による制度上の壁が、職場でのいじめやDVといった人権問題に直結し、救済につながりにくい現実を指摘。「私たちが"日本社会"と呼ぶものは、多様な外国人と日本人が共につくってきた」と訴える。
共に生きる社会のために
斎藤知事は知事選時から「人にやさしい兵庫」を掲げており、SNS対策や人権啓発の取り組みはその延長線上にある。ただ、国籍をテーマにした表現が、地域や世代によって受け止め方が分かれることも予想される。今後、県がどう丁寧に議論を重ねていくかも問われている。
- 兵庫県はSNS誹謗中傷の防止を目的とする事業を開始。プロスポーツチームとの連携で啓発活動を展開。
- 同県人権啓発協会が「国籍で人を判断するか?」をテーマにした啓発ジャーナルを発行。
- 専門家や当事者の声を通じて、多文化共生や社会の偏見構造を問い直す内容となっている。
- 県は今後も、SNS上のリテラシー向上と人権意識の涵養を柱とした施策を進める方針。