2025-06-13 コメント投稿する ▼
ICT活用で子どもの自己実現を支援 教育格差是正へ求められる構造改革
ICTで子どもの可能性を開く 自己実現支える学びの新基準
6月13日、衆議院文部科学委員会で学校教育を取り巻く課題をめぐり参考人質疑が行われ、公明党の浮島智子議員が「誰一人取り残さない教育」の在り方について質した。これに対し、東京学芸大学教職大学院の堀田龍也教授は、ICT(情報通信技術)を活用することで子どもたちが自分の得意や関心を生かし、自己実現に向かって歩める学びの環境が整うと指摘した。
個別最適な学び、協働的な学び──。これまでの“均一で一律”な教育から脱し、多様性と個性を尊重する時代へと教育現場は移行しつつある。だが、実際の現場には依然として課題が山積しており、ICT活用が「教育格差を広げる」リスクもはらんでいる。
ICTは「個別最適化」の鍵 だが全員に行き渡っているか?
堀田教授は、ICTを用いた教育が「学びのアクセシビリティを広げる」と強調した。具体的には、デジタル教材やAIを活用したフィードバックにより、子ども一人ひとりの理解度や進度に合わせた学習が可能になるという。また、ICTの導入により「教師が支援を必要とする子どもにより多くの時間を割けるようになる」とも語った。
浮島議員も「子どもたちの個性を伸ばす教育こそが真の“質の高い教育”である」と応じ、学びの形を転換する必要性を示唆した。
「タブレットだけ渡しても意味ない」
「使える先生とそうでない先生で差がありすぎる」
「ICT以前に学校にWi-Fiがまともにないんだが」
SNSでは、ICT導入の理想と現場の乖離を指摘する声が後を絶たない。自治体ごとのインフラ整備状況の差や、教員研修の不足が「新たな教育格差」を生む危険性も指摘されている。
教育のICT化、民間主導と公教育の“温度差”
GIGAスクール構想をはじめ、文部科学省は全国の小中学校に1人1台の端末を配備する取り組みを進めてきた。しかし、ハードが整っても運用が追いつかなければ意味はない。民間の教育事業者や一部の私立学校では、すでにデジタル教材やオンライン授業を活用した先進的な教育が展開されている一方で、公立学校の現場では「使い方がわからない」「授業に組み込みづらい」といった理由で十分に活用されていないケースが目立つ。
「タブレットはある。でも授業では使わない」
「教師が研修受ける時間すら確保できてない」
「ICT教育って、一部の先進校の話でしょ?」
教育の質を高めるためのツールとしてICTを活用するのであれば、その“使い手”である教員の育成や制度設計が不可欠であり、それなくしては導入効果は期待できない。
「誰一人取り残さない教育」実現に向けた課題
「誰一人取り残さない教育」という理念は美しいが、それを実現するためには、特別支援教育や日本語指導が必要な児童生徒へのサポート、多文化対応、家庭の経済状況による教育機会の格差など、より広い観点からの制度整備が求められる。
現状では、こうした要支援児童に対する対応も学校ごとに大きくばらついており、「どの学校に生まれ育つか」がその子の教育環境を大きく左右してしまっている。
加えて、現在の教育政策は「給付金頼み」で根本的な制度の立て直しが見えないのも問題だ。教育支援にこそ、恒久的な減税や所得控除、保護者支援策といった本格的な経済的基盤の支援が必要である。
「補助金じゃなく、教育費を恒常的に下げるべき」
「給付金よりも、教員数と待遇をどうにかしてほしい」
制度的にも財政的にも、教育を“未来への投資”と捉え直す転換点に来ている。
教育こそ“構造改革”を 給付金から減税・制度整備へ
ICT活用は、教育の可能性を広げる大きな手段であることは間違いない。しかし、現場の制度や人的支援、家庭への配慮がなければ「格差を可視化するツール」となりかねない。
公教育の本質は、すべての子どもが公平に質の高い教育を受ける機会を保障することだ。そのためには、「その場しのぎの支援」ではなく、制度と財政の両面から構造改革が必要だ。
減税を通じて教育費負担を根本的に軽減し、教員の待遇改善と研修制度を充実させ、地域格差を是正する──。そのうえでこそ、ICTが「子どもの自己実現」を支える本物のツールとして機能する。