2025-08-21 コメント投稿する ▼
スパイ防止法めぐり賛否再燃 安全保障と自由のはざまで揺れる国会議論
スパイ防止法をめぐる議論の再燃
今秋の臨時国会を前に、「スパイ防止法」制定をめぐる議論が再び注目を集めている。参政党の神谷宗幣代表が法案提出を目指すと表明したことに加え、国民民主党や日本維新の会も公約に掲げており、自民党も導入に前向きな姿勢を示したためだ。こうした動きに対し、一部の政党や団体からは「戦前回帰の弾圧立法だ」との強い反発が起きている。
スパイ防止法は、国家の防衛や外交に関する秘密情報の漏洩を防ぐ目的で構想されてきたが、その適用範囲や捜査権限が「国民監視の強化につながる」として過去にも廃案となった経緯がある。
思想弾圧につながるとの批判
参政党の神谷代表は、街頭演説で「極端な思想の人を社会の中枢から排除する必要がある」と述べ、スパイ防止法の意義を強調した。しかしこの発言は、「思想や信条の自由」を侵害し、政府に都合の悪い人材の排除に使われる恐れがあるとして批判を浴びている。
戦前の治安維持法も当初は共産主義者を取り締まる目的だったが、最終的には自由主義者や宗教者まで幅広く弾圧の対象となった歴史がある。こうした過去の教訓から、日本国憲法には思想・表現の自由が明記されており、スパイ防止法導入は憲法の理念に逆行するとの指摘が出ている。
秘密保護法との連続性
スパイ防止法構想は今回が初めてではない。1985年に自民党が提出した「国家秘密法案(スパイ防止法案)」は、国家秘密を漏洩した場合に死刑を含む厳罰を科す内容だったが、報道の自由や国民の知る権利を侵害するとの反発で廃案となった。
その後2013年には「特定秘密保護法」が成立し、防衛・外交・テロ対策など幅広い情報が「特定秘密」に指定可能となった。今回のスパイ防止法構想は、この流れをさらに拡大し「国内での徹底的な言論弾圧につながる」との懸念が表明されている。
世論の反応と今後の焦点
SNS上ではさまざまな意見が飛び交っている。
「スパイ防止は必要だが、政府が恣意的に使うのは危険」
「戦前の治安維持法と同じ道をたどるのでは」
「むしろスパイ活動を野放しにしてきた方が問題だ」
「秘密保護法でも十分に監視が強化されているのに」
「言論封じの口実になる可能性を見逃してはならない」
国民の安全を守る法整備は重要である一方、自由や人権を脅かす危険もある。石破政権が今後、どのように議論を整理し、国民に説明していくかが焦点となる。国会論戦では、自由の保障と安全保障の両立という難題に、各党がどのように答えるかが問われている。