2025-03-21 コメント投稿する ▼
能動的サイバー防御法案、通信の秘密侵害を巡る激しい議論
■ 「通信の秘密」の範囲とその影響
塩川議員は、憲法で保障されている「通信の秘密」の範囲について、通信内容だけでなく、通信の当事者の住所や氏名、発信場所、通信日時など、通信に関連するすべての情報が守られるべきだと指摘しました。これに対して、平将明デジタル相は、確かにこれらは「通信の秘密」に含まれることを認めました。
さらに塩川議員は、政府が「必要だ」と判断すれば、すべての通信情報をコピーできる仕組みになっているのではないかと問いただしました。内閣官房の小柳誠二審議官は、通信の内容に関わる情報も含めて取得されることを認め、この点が大きな懸念材料となっています。塩川議員はこれを「通信の秘密の侵害だ」と強く批判しました。
■ 重要インフラ事業者への影響
法案には、電気、ガス、鉄道などの重要インフラを担当する事業者から、通信情報を提供させることができるという規定も含まれています。塩川議員は、これらのインフラ事業者はほぼ全ての国民が利用しているものであり、実質的に誰でも情報提供の対象になるのではないかと指摘しました。特に、水道事業者に指定される自治体として埼玉県やさいたま市も含まれていることから、自治体も情報提供の対象になるのかと質問。小柳審議官は、法律上は自治体も対象になることを認めました。
■ 対象者の広がりと懸念
法案には、重要インフラ事業者に限らず、「電気通信役務の利用者」とも協定を結び、通信情報を提供させることができるとの規定もあります。塩川議員は、「ネット回線を利用している全ての人が対象になり得る」「家電メーカーや自動車メーカーと協定を結び、そこから情報を提供させる可能性もある」と指摘しました。これに対し、小柳審議官は、法文上ではそのようなことも可能であると認めました。
■ 「通信の秘密」の侵害を懸念する声
塩川議員は、この法案があまりにも広範囲に対象者を広げる仕組みであることを強調し、「通信の秘密」の侵害が強く懸念されると訴えました。これは、個人のプライバシーが政府の手によって無制限に監視されることにつながりかねないため、非常に大きな問題です。
平将明デジタル相は、法案の目的がサイバー攻撃から重要インフラを守るためであり、その運用については慎重に行われるべきだと述べました。しかし、具体的な運用方法や監視の透明性についてはまだ不十分であり、今後の議論が必要だということが改めて浮き彫りになりました。
■ 今後の議論に向けた課題
この法案はサイバーセキュリティを強化することを目的としていますが、個人の通信の秘密やプライバシー権とどうバランスを取るかが最大の課題となっています。塩川議員が指摘するように、政府による情報収集の範囲が拡大することによって、国民の基本的人権が侵害されるリスクが高まります。今後の議論では、法案の修正や適切な運用方法をどう整えるかが重要となるでしょう。