2025-11-28 コメント投稿する ▼
中国人観光客減少で浮き彫りになる日本観光業の多角化戦略、金子国交相「インバウンド政策上重要」も世界展開強化
高市早苗首相の台湾有事答弁に反発した中国政府が訪日自粛を呼びかける中、金子恭之国土交通相は2025年11月28日の閣議後会見で中国を「インバウンド政策上、重要な国」として早期正常化への期待を表明しました。一方で日本各地の観光地では、中国人観光客の減少により混雑緩和を歓迎する声も聞かれています。
外交摩擦が観光産業に波及
高市首相が台湾有事について集団的自衛権行使の可能性に言及したことで、中国政府は強硬に反発し、日本への渡航自粛を自国民に通達したという状況になっています。金子恭之国土交通相は11月28日の閣議後会見で、中国について「訪日客数、消費額ともに上位を占め、インバウンド政策上、重要な国だ」との認識を示し、早期の関係正常化への期待を表明しました。
自粛の呼びかけは11月14日に発表され、現地の旅行会社に対して、日本への旅行を控えるよう通知する動きに繋がったことが明らかになっています。
実際の影響として、国内では一部のビジネスホテルや旅館で、団体客のキャンセルが発生しているという状況が報告されています。中国国営メディアは、「すでに日本行き航空券のキャンセルは54万件を超えた」と報じ、中国の航空大手3社は、日本行き航空券の手数料なしでキャンセルや変更に応じると発表しており、観光業界への影響は確実に現れています。
「中国人観光客が減って観光公害がなくなった」
「京都が空いて旅行しやすくなった」
「渋滞がなくなって地元民には助かる」
「マナー問題が減った気がする」
「日本人が安心して旅行できるようになった」
中国人観光客の重要性と現状
2025年1月から9月の累計では、前年同期比17.7%増の3165万500人となり、過去最速で3000万人を突破したという訪日外国人数の好調な中で、中国人観光客は重要な位置を占めています。日本政府観光局によると、2025年1~9月の訪日中国人旅行者数は累計約749万人で首位の市場となっており、インバウンド産業にとって無視できない存在です。
しかし、訪日客全体に占める中国人の割合は、2019年の30%から24年は19%に減少している。欧米・オーストラリア人の割合は、同じ期間に13%から16%に伸びたという変化も見られ、日本の観光戦略は多様化が進んでいます。
この状況を受けて、金子氏は「中国からの訪日客の動向について注視するとともに、世界各国から日本を訪れていただけるよう、必要な取り組みを進める」と述べたとして、リスク分散の重要性も認識していることを示しています。
観光地住民の複雑な心境
中国人観光客の減少について、観光地の住民からは複雑な声が聞かれています。SNS上では、中国人旅行者のキャンセル報告が相次ぐ一方、日本側ではまったく異なる空気が広がっているのが現状です。
京都市内のホテルに異変が起きている。外国人観光客の急増で宿泊施設などの受け入れ能力が追いつかず宿泊費が高騰する「オーバーツーリズム」が懸案になっていたのがウソのように、宿泊料金が大幅に下がっているという状況が報告されており、観光公害の解消を実感する声が多数上がっています。
特に京都などの人気観光地では、一部の中国人のマナーの悪さや、地元の人の日常生活をも妨げる人の多さは、一種の「観光公害」とも考えられていたことから、今回の減少を機会として捉える住民も少なくありません。
経済への影響は限定的との見方も
一方で、実際の経済への影響については専門家の間で見方が分かれています。中国の訪日旅行"一斉キャンセル"は観光業に大打撃なのか?長期化懸念も「深刻ではない」理由という分析もあり、浅草のジュエリーショップの店長は、中国人観光客が減った分、日本人客が来店しやすくなったので、売り上げはそれほど落ちていないと語ったという現場の声も聞かれます。
訪日外国人旅行者に占める中国人の存在感はかつてほど圧倒的なものではないという構造変化も、影響を限定的にしている要因として挙げられています。また、中国人の訪日旅行の9割を占める個人旅行については、まだ明確な影響が見えていないのが実情です。
今回の事態について金子国交相は、影響の受け止めについては「政府間で交渉していること」として言及を避ける一方、「早く、通常の状況に戻っていただきたい」とも述べたとして、外交的解決への期待を示しています。一方で観光地の多様化戦略も並行して進めていく姿勢を明確にしており、インバウンド政策の転換点になる可能性もあります。