2025-11-07 コメント投稿する ▼
国交省がLNG燃料船船員教育ワークショップ開催、アジア諸国と脱炭素化推進
国土交通省が2025年10月下旬から11月上旬にかけて、アジア地域におけるLNG燃料船の船員教育訓練の質の向上を目的とした船員教育者向けワークショップを開催しました。 今回のワークショップを契機として、各国の船員教育機関におけるLNG燃料船乗組員訓練の質的向上が期待されています。
国際海運の脱炭素化に向けた人材確保が急務
IMOにおける国際海運からの温室効果ガス排出削減目標の策定を受け、重油と比較してCO2の排出量が約25%少ない液化天然ガス(LNG)燃料船の導入が世界的に進んでいます。LNG燃料船は従来の重油燃料船と比べて硫黄分がゼロ、窒素酸化物の排出も大幅に抑制されるため、環境規制が厳しくなる中で重要な選択肢となっています。
しかし、LNG燃料船の普及のためには、安全な運航を担う船員を十分に確保・育成することが不可欠です。LNGは従来の重油とは異なる特性を持つため、専門的な知識と技能を身につけた船員が必要となります。特にアジア地域は世界の船員供給国として重要な役割を果たしており、この地域での教育訓練能力向上は国際海運全体の安全性確保に直結します。
今回のワークショップは、こうした状況を受け、日本とIMOとの技術協力事業として企画されました。公益財団法人日本財団及び一般財団法人日本船舶技術研究協会の支援を受けて実施されています。
実践的な教育プログラムで即戦力育成
ワークショップには、アジア地域の主要な船員輩出国であるインドネシア、フィリピン、ベトナムの船員教育訓練機関に勤める教育者9名を日本に招聘しました。また、国際海事大学連合から推薦を受けたオーストラリア及びスウェーデンからの講師2名も迎えての国際的な取り組みとなりました。
プログラムは段階的に構成されており、10月30日から11月1日にかけては独立行政法人海技教育機構の海技大学校(兵庫県芦屋市)において座学講習及びシミュレータ訓練を実施しました。参加者はLNG燃料船の特性、安全管理、緊急時対応などについて理論と実践の両面から学習しました。
「LNG燃料船の技術は複雑で、従来の船舶とは全く違う知識が必要」
「アジア各国の船員教育機関が連携できるのは心強い」
「実際のシミュレータで訓練できるのは貴重な経験」
「自国の船員教育に活かせる具体的なノウハウを学びたい」
「日本の技術力の高さを実感している」
11月5日には、一般財団法人海上災害防止センター(神奈川県横須賀市)においてLNG消火訓練を実施しました。LNGは可燃性ガスであるため、万一の火災発生時には専門的な消火技術が必要となります。参加者は実際の設備を使用して、LNG特有の火災への対処法を習得しました。
国際競争力強化と安全基準の統一化
このワークショップの背景には、国際海運業界における競争激化があります。中国が船舶建造シェアを急速に拡大する中、日本は技術力と人材育成力で差別化を図る戦略を取っています。特にLNG燃料船分野では、日本の造船技術と安全管理ノウハウが高く評価されており、今回の取り組みもその一環です。
STCW条約(船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)に定められた要件に基づき、参加者は3日間の集中プログラムを受講しました。IGFコード(国際ガス燃料規則)で求められる能力基準を満たす教育者の育成が主要目標となっています。
また、アジア地域全体での教育水準の統一化も重要な意義があります。各国の船員教育機関が共通の基準とカリキュラムを持つことで、国際的に通用する船員の安定供給が可能になります。
2050年カーボンニュートラルへの貢献
IMOは2050年までに国際海運からのGHG排出をゼロにする目標を設定しており、その実現にはLNG燃料船の普及が不可欠とされています。現在、世界で運航中のLNG燃料船は200隻を超え、発注済みの船舶も多数に上りますが、その多くは欧州で運航されています。
アジア太平洋地域でのLNG燃料船普及には、適切な教育を受けた船員の確保が最大の課題となっています。今回のワークショップを契機として、各国の船員教育機関におけるLNG燃料船乗組員訓練の質的向上が期待されています。
国土交通省では、このような国際協力事業を通じて日本の海事技術の海外展開を促進するとともに、グローバルな海事人材ネットワークの構築を目指しています。参加者は帰国後、自国の教育機関で今回習得した知識と技能を活用し、より多くの船員にLNG燃料船運航技術を教育することになります。
今回の取り組みが成功すれば、アジア地域全体でのLNG燃料船運航技術の底上げが期待され、国際海運の脱炭素化と安全性向上の両立に大きく貢献することになるでしょう。