2026-03-02 コメント投稿する ▼
茂木外相「緊急事態ではない」備蓄で対応可能
茂木敏充外務大臣は3月2日、イラン情勢を受けたホルムズ海峡の封鎖をめぐり、日本のエネルギー供給について、備蓄があるので「緊急の事態がおこるということではない」との認識を示しました。しかし、事態が長期化した場合のエネルギー供給への影響や、原油の国内価格への影響について、注視していくとの考えを示しています。茂木外相の発言は、日本政府として冷静な対応を呼びかける一方で、長期化リスクへの警戒を緩めない姿勢を示したものです。 米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けて、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡の通航禁止を放送し、世界の石油輸送の約2割が通過する同海峡が事実上の封鎖状態に陥っています。日本は輸入する原油の9割以上を中東地域に依存しており、大半がホルムズ海峡を経由して輸送されているため、エネルギー安全保障の観点から重大な懸念が生じています。
国家備蓄で短期的には対応可能
茂木外相が「緊急の事態がおこるということではない」と述べた根拠は、日本の石油備蓄にあります。
資源エネルギー庁によると、2025年12月末時点で国家備蓄として国内の石油消費量の146日分に相当する原油を備蓄しています。政府と産業界によって国内の原油需要の約180日分に相当する備蓄を用意しているため、短期的には供給に問題はないとの判断です。
出光興産も「国内在庫や国家備蓄があり、石油製品の供給に直ちに影響が出ることはない」としています。
LNGについても同様です。日本全体ではカタールやオマーンから調達しており、中東産は日本の輸入量の1割程度を占めるにとどまります。短期的な影響は限定的とみられています。
「備蓄があるから大丈夫って、180日しかないんだぞ」
「長期化したらどうするんだ。対策を今から考えるべき」
「茂木大臣の発言は国民を安心させるためのものか」
「エネルギー価格の高騰は避けられない。家計への影響が心配」
「中東依存から脱却できない日本のエネルギー政策が問題」
長期化すれば深刻な影響
しかし、茂木外相が「事態が長期化した場合のエネルギー供給への影響や、原油の国内価格への影響について、注視していく」と述べたように、封鎖が長期化すれば深刻な影響が避けられません。
封鎖が180日を超えて長期化した場合、他国からの輸入だけで供給不足を完全に埋めることはほぼ不可能となります。日本は原油の9割超をサウジアラビアやアラブ首長国連邦といった中東地域に依存しており、多くがホルムズ海峡を通過して約20から25日かけて運ばれているためです。
専門家の試算では、原油価格が120ドル前後で推移した場合、日本の実質GDPは1年間で0.6パーセント程度押し下げられるとされています。
ホルムズ海峡で深刻な事態が発生し、原油価格が100ドルを突破した場合、国内のガソリン価格は1リットルあたり20円から30円程度の押し上げ圧力を受けることになります。これは、政府の補助金施策を考慮しても、家計や物流コストに多大な負担を強いる「180円から200円超え」の局面を招きかねません。
エネルギー価格の高騰は輸入物価を押し上げ、日本の消費者物価指数を0.6から0.7パーセント程度引き上げると予測されています。昨今のインフレ傾向に拍車がかかり、実質賃金の伸びをさらに抑制する懸念が強まっています。
海運各社は航行停止
商船三井と日本郵船、川崎汽船の海運大手3社は3月1日までに、ホルムズ海峡の航行停止を決定しました。
商船三井はホルムズ海峡をつなぐペルシャ湾内において、同社が管理するLNG船や原油タンカーなど10隻ほどが常時航行しているとみられます。同社は「船員、貨物、船舶の安全を最優先に24時間体制で監視を強化している」としています。
日本郵船も平時は同湾内にLNG船や自動車運搬船などを航行させており、ホルムズ海峡の回避を艦隊に指示しました。川崎汽船もペルシャ湾内に複数の船が航行していましたが、安全な海域での待機を指示しました。
報道によると、ホルムズ海峡を通過する船舶が2月28日夜時点で約7割減少し、数百隻の船舶が同海峡付近で停泊しています。航行停止が長期化すれば、物価高騰などに伴う経済への悪影響につながりかねません。
原油価格は既に上昇
エネルギー市場では、すでに原油価格の上昇が始まっています。
2026年2月時点で、ブレント原油価格は年初から約20パーセント上昇し、1バレル73ドル台に達しています。ホルムズ海峡が完全に封鎖された場合、ブレント原油価格は130ドル近くまで急騰すると警告する専門家もいます。
アジアのLNG価格は原油価格と概ね連動するため、同様の事態が起きた場合、日本、韓国向けの指標価格は2から3倍に跳ね上がる可能性があります。
原油価格が持続的に1バレル120から130ドルで推移した場合、日本の輸入コストは大幅に増加し、貿易赤字が拡大します。その結果、円安圧力が一段と強まり、日本銀行によるインフレ抑制の取り組みをさらに困難にさせます。この影響により日本経済はスタグフレーションに陥るリスクが指摘されています。
政府の対応が問われる
茂木外相の「緊急の事態がおこるということではない」との発言は、短期的には備蓄があるため供給に問題はないという事実に基づいています。しかし、長期化した場合の影響は甚大であり、政府の対応が問われています。
高市早苗首相は2月28日、国家安全保障会議を開催し、片山さつき財務相や茂木外相、小泉進次郎防衛相ら関係閣僚と日本政府の対応を約1時間にわたり協議しました。首相はNSCで、情報収集の徹底と現地邦人の安全確保など関係省庁に万全の措置を講じるよう指示しました。
片山財務相は2月28日、首相官邸で記者団に「私の場合は金融とかマーケットとかのことがある。我々は共通して細心の注意を持って当たるということだ」と発言し、金融市場への影響を注視する姿勢を示しています。
木原稔官房長官は3月1日未明の記者会見で「中東の平和と安定はわが国にとっても極めて重要だ」と力説し、エネルギーの確保に努める意向を表明しました。「事態の早期沈静化に向け、国際社会と連携し、必要なあらゆる外交努力を行う」と述べています。
エネルギー政策の抜本的見直しが必要
今回の事態は、日本のエネルギー安全保障の脆弱さを改めて浮き彫りにしました。日本は依然として一次エネルギーの約85パーセントを化石燃料に依存しており、中東への依存度が極めて高い状況です。
専門家は、日本国内の再生可能エネルギー資源は決して不足していないと指摘します。太陽光発電で2000ギガワット超、風力で約1000ギガワットの技術的ポテンシャルが見込まれており、これは現在の電力需要の10倍以上に相当します。
再生可能エネルギーは、コモディティ価格ショックに対するリスク軽減機能も果たします。太陽光や風力はいったん建設されれば燃料コストゼロの電力を供給し続け、ホルムズ海峡危機のような価格変動から家庭や産業を守ることになります。
茂木外相の「緊急の事態がおこるということではない」との発言は、国民の不安を和らげる効果はあるかもしれません。しかし、備蓄に頼るだけでは根本的な解決にはなりません。エネルギー政策の抜本的見直しが求められています。