2025-08-22 コメント投稿する ▼
JA組合長が小泉農水相に直談判「農協を残して」 令和の米騒動で揺れる農政
JA組合長が直談判 農協存続を訴える背景
福岡県のJA直鞍の堀勝彦組合長(83)が小泉進次郎農水相に直談判し、「農協を残してほしい」と強く訴えた。背景にあるのは“令和のコメ騒動”と呼ばれる米価を巡る混乱だ。農林水産省は当初、備蓄米の販売期限を8月末と定めていたが、生産者や流通現場からの要望を受け、急きょ延長を決定した。これにより市場への供給が長引き、新米価格の下落につながるのではないかという懸念が広がっている。
堀組合長は「価格が暴落したら農家は大打撃を受ける」と危機感を示した。小泉農水相は「延長は新米には影響しない」と説明したが、現場の不安は容易に解消されない。農協側にとっては米価の安定こそが組合員を守る最大の使命であり、政策判断の一つ一つが生産者の生活に直結する。
「農協をなくす方向に進むのではと不安」
「結局、都会の政策判断が地方を苦しめる」
「農協があるから農業を続けられる農家は多い」
「米価の乱高下は消費者にとっても迷惑だ」
「政治家の言葉より現場の声を大事にしてほしい」
こうした声がネットでも相次ぎ、農協の存在意義が改めて注目されている。
備蓄米と価格安定を巡る攻防
備蓄米制度は、過去の不作や価格高騰に備えるために導入された。しかし、豊作の年には放出が増え、市場価格の下押し要因となることもある。今年は異常気象による品質不安や害虫被害も加わり、例年以上に市場が不安定だ。堀組合長は「米余りで値下がりすれば農家は立ち行かなくなる」と直言し、農協の役割を守る必要性を強調した。
小泉農水相は「もし価格が暴落すれば、備蓄米の放出量を調整して水準を戻す」と説明したが、現場感覚とのずれは否めない。政策側は全国平均を見て判断するが、農協は地域ごとに事情が異なることを知っている。堀組合長は「地域によって事情が違う。私たちは日々苦労して対応している」と念を押した。
さらに、害虫カメムシの被害対策についても議論が及んだ。堀組合長が「駆除が徹底されれば3割増産できる」と訴えると、小泉農水相は「臨時対策として防除3回目を補助する」と応じた。ただし、その情報が現場に届いていないことも明らかとなり、行政の周知不足が浮き彫りになった。
JAの地域貢献と多様な役割
堀組合長は農協が果たす多面的な役割も強調した。「青少年育成や水資源の保全、音楽祭やスポーツ教室など、農協は地域社会に広く貢献している」と語り、単なる米販売組織ではないことをアピールした。女性管理職の登用や高齢者支援など、組織改革や地域福祉にも積極的に取り組んでいるという。
小泉農水相も「地元のJA横須賀葉山では盆踊りや酪農体験を行っている」と応じ、農協の地域密着型の活動を評価した。ただし、全国的には「委託販売中心で買い取りを行わないJA」への不満も出ており、組合員の多様なニーズに応える改革を求める声がある。農水相は「委託と買い取りの両方を選べる仕組みを広げてほしい」と提案し、JAに自助努力を促した。
米政策の転換点と農協の存続
農政は今、大きな転換点を迎えている。高齢化や担い手不足が進み、農業経営の効率化と地域社会の持続性を両立させる難題が突きつけられている。農協はその中核的役割を担う存在だが、効率化の名の下で統廃合や縮小が進めば、地域の農家や消費者に深刻な影響を及ぼす。
堀組合長は「農協は真剣に努力している。残してほしい」と強く要望した。小泉農水相は「農協を残すかどうかは、組合員から必要とされるか次第」と答えたが、行政の方針が現場に与える影響は小さくない。
農協は単なる経済組織ではなく、農業を基盤とした地域社会の支えでもある。新米の季節を前に、農政の舵取りが試されている。政策が市場原理だけでなく、地域の生活に根ざした実態を踏まえて行われるかどうか。今後の展開は、農家だけでなく消費者の食卓にも直結する重大な課題だ。