2025-07-01 コメント投稿する ▼
米菓や酒が作れない?コメ加工業界が原料不足で悲鳴 政府に備蓄米放出を要請
加工用米が足りない!コメ加工業界が備蓄米放出を要請
米菓や餅、日本酒の原料米が危機的不足 背景に「主食用偏重」政策
小泉進次郎農相に業界団体が直談判 もち米や酒米の確保へ抜本対応を
餅、せんべい、日本酒――日本の伝統的な食文化を支える加工用米が、いま深刻な供給不足に直面している。1日、米菓・餅・みそ・米粉などの加工業界7団体が小泉進次郎農相と面会し、政府の備蓄米を加工向けに優先的に放出するよう要望書を提出した。
背景にあるのは、主食用米に偏った政策と、農家のもち米・酒米離れだ。物価高による需給の逼迫で、生産現場は対応しきれなくなっている。
もち米・酒米が作られなくなる時代
要望を提出したのは新潟県米菓工業協同組合をはじめとする全国規模の団体で、「もち米の作り手がいなくなっている」「今のままでは餅やせんべいの製造が止まりかねない」と強い危機感をあらわにした。農家が収益性を重視して、より市場の安定する主食用米に作付けを切り替える傾向が強まっているためだ。
農水省の作付け意向調査(2025年4月末時点)によれば、加工用米の作付面積は前年比12%減の見通し。これは、業界にとって“製造できない”可能性を意味する深刻な数字である。
「今年は確保できるか読めない」
「価格が上がるだけでなく、原料そのものが手に入らない」
「このままでは和菓子や米菓の存続も危うい」
政府備蓄米はなぜ加工業界に回らないのか
政府が抱える備蓄米は、これまで主に主食用として市場に流通されてきた。しかし、加工業界からは「主食用ばかり優遇され、われわれの声が無視されてきた」との不満が根強い。業界団体は今回、加工向けの放出枠を明確に設けるよう要請し、供給ルートの見直しを求めている。
一方、農水省は「随意契約を通じて備蓄米の流通は進めている」としつつも、「小売側の販売体制や精米業者とのマッチングが進んでいない」と対応に遅れがある。
日本酒業界も悲鳴 「米がない」「高すぎる」
同日、小泉農相と面会した日本酒造組合中央会の大倉治彦会長も「酒米が値段高騰に加え入手困難」と訴えた。大吟醸酒などでは特定の高品質米(山田錦など)を必要とするが、その作付けも減少傾向にあり、蔵元は苦境に立たされている。
大倉会長は、原料購入の補助金制度の創設や、生産農家への直接支援を要望。「文化的価値ある酒造りが立ち行かなくなる」と危機感をにじませた。
米の偏った需給調整に限界 農政は「食文化」を守れるか
かつて「減反政策」で需要調整が図られたコメ農政だが、現状では主食用への誘導が強すぎるとの指摘が増えている。食生活の多様化や人口減少で主食用米の消費が減る一方、加工用や業務用、輸出向けの需要は底堅い。にもかかわらず、政策対応は「主食優先」で遅れが目立つ。
「日本の伝統食品を守るのが農政の役割のはず」
「酒も餅もせんべいも作れないなら、農業の意味がない」
「需給バランスの失敗で食文化を壊すな」
小泉農相は会談後、「精米設備にも余力があり、業界とのマッチングを支援したい」と語ったが、対症療法に過ぎないとの指摘もある。
日本のコメ産業は、今まさに岐路に立たされている。田んぼから食卓までをつなぐ持続可能な仕組みがなければ、「正月の餅も、日常の煎餅も、晩酌の酒も」日本から消えてしまうかもしれない。