2026-09-09 コメント投稿する ▼
山林開発の風力発電、メガソーラー級の森林破壊懸念で規制強化を要望
環境保護団体「全国再エネ問題連絡会」は2026年10月8日、資源エネルギー庁と林野庁に対し、山間部や尾根筋に建設が進む風力発電について、大規模太陽光発電(メガソーラー)と同様の「森林破壊型」開発であるとして、立地規制の強化を求める要望書を提出しました。 しかし、「全国再エネ問題連絡会」は、こうした開発が住民に十分に知られないまま、過疎地や人里離れた山奥で計画が進められている実態を問題視しています。
山奥で進む開発、住民の懸念
再生可能エネルギー導入拡大の流れの中で、近年、山間部や尾根筋といったこれまで開発の手が及びにくかった地域での大規模風力発電計画が全国各地で進んでいます。しかし、「全国再エネ問題連絡会」は、こうした開発が住民に十分に知られないまま、過疎地や人里離れた山奥で計画が進められている実態を問題視しています。
同連絡会によれば、2014年以降に環境影響評価の手続きが行われた事業のうち、国有林や民有保安林を含む風力発電計画は全国で170件に上るとのことです。メガソーラーによる景観破壊や土砂災害リスクへの懸念から、高市早苗政権は規制強化を進めてきましたが、同様の環境破壊や災害リスクを伴う可能性のある山林開発型の風力発電に対する規制が、いまだ追いついていないのが現状だと連絡会は指摘しています。
保安林制度の盲点、実態と乖離する数字
連絡会が特に問題視しているのは、風力発電開発における森林伐採の実態と、それを管理する保安林制度との間に生じている乖離です。保安林は、水源の涵養(かんよう)や土砂災害の防止など、国土の保全において極めて重要な役割を担っています。そのため、大規模な森林伐採や造成を伴う開発を行う場合、原則として保安林の指定解除が必要となります。
しかし、連絡会が例として挙げた福島県阿武隈高地の「阿武隈風力発電」では、46基の風車設置のために約37ヘクタールもの森林が伐採・造成されたにもかかわらず、保安林の指定解除面積はわずか3.35ヘクタールにとどまっています。これは、風車本体が設置される敷地(約4.7ヘクタール)よりも、事業に必要な管理用道路(約28.6ヘクタール)の面積がはるかに大きく、その大部分が保安林の指定解除を伴わない「保安林内作業許可」という形で整備されたためです。
林野庁長官は2024年6月の参院決算委員会で、固定価格買い取り制度(FIT)開始以降、風力発電のために保安林を解除した実績は34件、72ヘクタールだと答弁していますが、連絡会はこの数字だけでは開発の実態規模を把握できないと警鐘を鳴らしています。
「森林破壊型」開発への警鐘
連絡会は、保安林の解除面積だけを見ると開発規模が小さく見えがちですが、実際の風力発電開発では、風車本体を設置する敷地よりも、広範囲にわたる管理用道路の整備が開発面積の多くを占めることを問題視しています。これらの道路建設のために、山が大規模に削られたり、土砂が盛られたりする一方で、その多くが保安林の指定解除手続きを経ずに「保安林内作業許可」で進められているのです。
林野庁は、この作業許可の対象を「保安林の機能を阻害しない軽微なもの」に限定すると説明していますが、連絡会の指摘からは、その運用実態が保安林の本来の機能を損なうほど広範な開発を許容してしまっている可能性がうかがえます。日本弁護士連合会も2023年8月の意見書で、再生可能エネルギー開発に必要な保安林内の林道建設について、保安林内作業許可のみで扱わず、開発全体と一体的に審査すべきだと提言しており、制度の見直しが急務となっています。
高知県国見山周辺でも、同様に保安林内作業許可を利用して道路工事が先行されている事例が報告されています。
求められる規制強化と今後の課題
今回の要望書で、連絡会は具体的な規制強化策として、保安林、土砂災害警戒区域、水源地などでの風力発電施設設置を原則避ける方針の明確化を求めています。さらに、保安林解除の手続きを、再生可能エネルギーの導入支援制度であるFITやFIP(市場連動型制度)の認定要件に組み込むこと、そして風車本体だけでなく管理用道路を含めた開発全体を一体として審査する仕組みの整備などを訴えています。
連絡会の共同代表を務める室谷悠子弁護士は、「開発は下流まで影響が及ぶ。これほど大きな開発が、人に知られない過疎地や山奥で日本中で起ころうとしている」と危機感を表明しました。「メガソーラーと全く同じ背景がある森林破壊型の再生可能エネルギーだ。同じように規制してほしい」と訴えています。島国である日本にとって、水源の確保は国土の持続可能性に直結する問題であり、住民だけで開発の実態把握や規制運動を行うには限界があるとして、国による実効性ある対策を求めています。
高市早苗政権は、これまでも無秩序なメガソーラー開発に対しては厳しい姿勢を示してきましたが、今後は同様の懸念が指摘される風力発電に対しても、より踏み込んだ規制強化策が求められることになるでしょう。
まとめ
- 環境保護団体が風力発電の規制強化を要望。
- 山間部での開発が住民に知られず進行中。
- 保安林制度と開発実態の乖離が問題視されている。
- 具体的な規制強化策が求められている。