2026-03-09 コメント投稿する ▼
国家備蓄石油の放出準備を経産省が指示、ホルムズ海峡封鎖で原油調達危機に備え
経済産業省が2026年3月9日、国内10カ所の国家石油備蓄基地に対し、放出準備を指示したことが明らかになりました。米国とイスラエルによるイラン攻撃の影響でホルムズ海峡が事実上封鎖され、原油調達が途絶する不測の事態に備えた措置です。政府は備蓄放出を決定していないと強調していますが、エネルギー安全保障をめぐる緊張が高まっています。
ホルムズ海峡封鎖で原油供給に危機
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃したことを受け、イラン革命防衛隊は3月2日にホルムズ海峡を封鎖したと発表しました。ホルムズ海峡は世界の原油や液化天然ガスの約2割が通過するエネルギー輸送の生命線です。イラン側は通過する船舶への攻撃を警告し、実際に複数のタンカーが攻撃される事態となっています。
「ガソリン代がまた上がるのか。勘弁してほしいよ」
日本郵船、商船三井、川崎汽船といった日本の海運大手3社も航行を停止しました。日本船主協会によると、ペルシャ湾内に日本関係船が44隻停泊しており、その約3分の2が原油タンカーやLNG運搬船です。海運会社は保険会社がホルムズ海峡を通過する船舶への保険適用を停止したため、航行できない状況に陥っています。
原油価格は急騰しており、国際指標のブレント原油先物価格は2月27日の1バレル73ドルから3月上旬には90ドルを超える水準まで上昇しました。一部では120ドルに接近する場面もあり、専門家は今後100ドルを超える可能性も指摘しています。
国家備蓄146日分の放出準備を指示
経済産業省は3月6日、全国10カ所の国家石油備蓄基地に放出準備を指示しました。基地は北海道、秋田、福井、鹿児島などにあり、合計で国内消費量の146日分を備蓄しています。これとは別に石油元売りや商社による民間備蓄が101日分、産油国との共同備蓄が7日分あり、合計254日分の備蓄があります。
「備蓄があるなら早く放出してくれないと、生活が苦しくなる一方だ」
鹿児島県の志布志国家石油備蓄基地を視察した国会議員によると、資源エネルギー庁から3月6日に放出準備の指示があったと基地の担当者から説明を受けたとのことです。放出時の輸送態勢の確認なども進められているとみられます。
経産省関係者は「日常的に放出訓練もしており、その延長線上のこと。放出が近いというわけではない」と説明しています。しかし、石油元売り各社はすでに政府に対して国家備蓄と産油国共同備蓄へのアクセスを要請しており、入札プロセスの迅速化も求めています。
日本のエネルギー供給の9割が中東依存
日本は原油輸入の95パーセント以上を中東に依存しており、そのうち約70パーセントがホルムズ海峡を経由しています。ロシア産原油の輸入を2022年に控えたことで、中東依存度はさらに高まりました。2025年の原油の中東依存度は約94パーセントに達しており、ホルムズ海峡の封鎖は日本のエネルギー安全保障に直結する重大な問題です。
「石油がないと経済が回らない。なんとか早く解決してほしい」
海運業界では、ペルシャ湾内で待機を余儀なくされている船舶の食料や水の供給といった問題も浮上しています。川崎汽船は社長を本部長とする対策本部を設置し、待機している船の備蓄状況の把握を進めています。日本郵船と商船三井も24時間体制で船の監視を続けています。
ホルムズ海峡を迂回できる石油供給ルートは限られています。サウジアラビアには東西石油パイプラインがあり、日量500万バレルの輸送能力があります。UAEにもアブダビからフジャイラまでのパイプラインがあり、日量150万から180万バレルの輸送能力があります。しかし、これらの代替ルートだけでは従来ホルムズ海峡を通過していた輸送量全てをカバーすることは困難です。
単独放出も視野に検討か
木原稔官房長官は3月9日の記者会見で、石油備蓄について「放出を決定した事実はない」と述べました。ただし、政府内の検討状況を逐一答えることは差し控えるとしており、水面下で検討が進められている可能性があります。
過去には2022年4月、ロシアのウクライナ侵攻に伴う需給逼迫を受けて、国際エネルギー機関の協調行動に合わせて日本も国家備蓄と民間備蓄を組み合わせて計1500万バレルを放出しました。しかし、今回は日本単独での放出も選択肢に含まれているとの報道もあります。実現すれば、1978年の国家備蓄制度創設以来初の単独放出となります。
「国際協調も大事だけど、日本の国益を第一に考えてほしい」
専門家は、仮に原油価格が1バレル120ドルの水準を維持した場合、国内のガソリン価格は1リットル282円となり、実質GDPを1年間で0.47パーセント押し下げ、物価を0.83パーセント押し上げる可能性があると試算しています。軽油引取税の暫定税率は2026年4月1日に廃止される予定ですが、政府は2025年11月からすでに同額の補助金を支給しているため、店頭価格への追加的な効果は限定的とみられます。
備蓄放出は原油価格の上昇を持続的に抑える効果は期待できませんが、混乱の初期段階で国内市場に安心材料を与え、調達先の見直しや物流対応の時間を稼ぐ効果はあるとされています。政府は状況を注視しつつ、日本のエネルギー安定供給確保に万全を期していく方針を示しています。
イラン情勢の先行きは不透明で、ホルムズ海峡の封鎖がいつまで続くかは見通せない状況です。日本経済への影響を最小限に抑えるため、政府の迅速な判断が求められています。