2026-09-06 コメント投稿する ▼
電子カルテ全国共有へ 2030年基盤構築 医療DX加速の鍵は費用軽減
高市早苗政権が、全国の医療機関で患者の電子カルテ情報をインターネット上で共有できるシステム基盤の構築を2030年度までに目指す方針であることが分かりました。 この基盤構築に向け、政府は新たに登場する「クラウドネイティブ型」電子カルテシステムの普及を後押しする方針です。 現在、大規模病院の多くは、自施設内にサーバーを設置・管理する従来の「オンプレミス型」電子カルテシステムを導入しています。
新システム構築へ政府が描く青写真
政府は、医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進する国家戦略の一環として、この電子カルテ情報共有ネットワークの整備を急ぐ考えです。目指すのは、個々の医療機関が保有する電子カルテ情報を、標準化された仕様に基づき、セキュアなインターネット網を通じて相互に連携させる基盤を2030年度までに確立することです。これにより、例えば急病で救急外来を受診した場合や、旅行先で体調を崩した場合でも、過去の病歴やアレルギー情報、現在服用中の薬剤などが迅速に医療従事者に共有されるようになります。
この基盤構築に向け、政府は新たに登場する「クラウドネイティブ型」電子カルテシステムの普及を後押しする方針です。厚生労働省は、特に中小規模の病院や診療所に対し、導入にかかる費用の一部を補助する制度の導入を検討しています。国の標準仕様に準拠したクラウドネイティブ型電子カルテシステムの販売は2027年4月から開始される予定で、厚労省は2026年度予算の概算要求に604億円を計上しました。導入費用の半額を上限付きで補助するなど、費用負担の軽減策を講じることで、中小規模医療機関のデジタル化を強力に後押しする狙いです。
一方、診療科目が多く、情報管理の複雑さが際立つ大規模病院に対しては、個別のシステム開発支援を行います。2029年度にはシステムの実証実験を行い、2030年度からの本格導入を目指す計画です。現在、大規模病院の多くは、自施設内にサーバーを設置・管理する従来の「オンプレミス型」電子カルテシステムを導入しています。政府は、これらの既存システムからクラウドネイティブ型への移行も視野に入れ、必要に応じて支援策を検討していく考えです。
既存システムの課題と新方式への期待
現在の電子カルテシステムは、その多くが「オンプレミス型」と呼ばれる方式を採用しています。これは、各医療機関が自らの施設内にサーバーや関連機器を設置し、システムを構築・運用する形態です。この方式の最大の問題点は、システムを提供するベンダーごとの技術や仕様が標準化されていないため、異なるベンダーのシステム間での情報共有が極めて困難であることです。医療機関は、このベンダーロックイン(特定のベンダーに依存した状態)から抜け出しにくい構造となっています。
さらに、オンプレミス型は、サーバーや機器の購入費用だけでなく、その後の維持管理や定期的なシステム更新にも高額な費用がかかります。中国・四国地方の病院を対象としたアンケート調査によれば、病床数200~299床の病院では電子カルテシステムの導入に平均約2億5千万円、500床以上の大規模病院では約12億7千万円もの費用がかかるとされています。年間維持費もそれぞれ約2300万円、約1億7000万円と、病院経営を圧迫する大きな要因となっているのが実情です。山口県医師会会長も務める山口労災病院の加藤智栄特任院長は、「電子カルテは大きな経営上の負担であり、国の支援を求める声や、ベンダー変更時の費用が法外であるという意見が後を絶たない。今の医療機関は経営難にあり、導入はさらなる経営負担にしかなっていない」と、現場の窮状を訴えています。
こうした状況に対し、政府はインターネット上で情報を共有する「クラウドネイティブ型」への移行が、コスト削減とセキュリティ強化の両立に繋がると期待しています。例えば、診療所の場合、オンプレミス型なら300万円程度かかるところ、クラウドネイティブ型であれば50万~100万円程度で導入可能になると試算されています。低コストでありながら、最新のセキュリティ対策を施しやすい点も、クラウドネイティブ型の大きなメリットと言えるでしょう。
普及に向けた課題と今後の展望
政府は、中小規模病院と診療所への導入支援を優先する方針ですが、大規模病院への支援については、今後の予算状況や導入効果を見極めながら慎重に判断していく考えです。医療機関の基幹システムとなる電子カルテの導入・更新は、国の医療制度の根幹に関わるだけに、限られた政府予算の中でどこまで支援を広げるべきか、政府・与党内でも意見が分かれる可能性は否定できません。
現在、電子カルテの普及率は、2025年時点で病院が65.6%、診療所が55.0%となっています。特に400床以上の大規模病院においては93.7%と高い導入率を示しており、規模の大きい医療機関ほど、情報システムの重要性を認識し、導入が進んでいることがわかります。しかし、全国規模での情報共有網の構築には、まだ導入が進んでいない中小規模の医療機関への働きかけが不可欠です。
この全国規模での電子カルテ情報共有網の整備は、単なる医療DXの推進にとどまらないでしょう。国民皆保険制度の持続可能性を高め、どこに住んでいても質の高い医療を受けられる「地域医療構想」の実現に不可欠なインフラとなり得るのではないでしょうか。高市政権が掲げるこの国家的な取り組みが、国民一人ひとりの健康と安心を守る未来へと繋がっていくことを期待したいと思います。
まとめ
- 高市早苗政権が2030年度までに全国の医療機関で電子カルテ情報の共有を目指す。
- 新たな「クラウドネイティブ型」電子カルテシステムの普及を後押しする方針。
- 中小規模医療機関への費用補助が検討されている。
- 全国規模での情報共有網の整備は、国民皆保険制度の持続可能性に寄与する可能性がある。