2025-11-25 コメント投稿する ▼
障害福祉職員給与5.4%増の33.3万円も一般企業格差解消に課題、調査回収率50.2%にバイアス懸念
厚生労働省は2025年11月25日、障害福祉サービス職員の処遇改善に関する最新調査結果を公表しました。 一方で、有識者からは一般企業との賃金格差解消や調査の回収率に関する課題が指摘され、障害福祉分野の人材確保に向けた更なる取り組みの必要性が浮き彫りになりました。 処遇改善加算の取得状況を見ると、2025年7月時点で89.9%の事業所が処遇改善加算を取得していることが判明しました。
障害福祉職員給与5.4%増も課題山積
平均月33.3万円、一般企業との格差解消に課題
厚生労働省は2025年11月25日、障害福祉サービス職員の処遇改善に関する最新調査結果を公表しました。処遇改善加算を取得している事業所の常勤職員の平均給与は月33万3340円となり、前年9月から5.4%(1万6970円)上昇しました。一方で、有識者からは一般企業との賃金格差解消や調査の回収率に関する課題が指摘され、障害福祉分野の人材確保に向けた更なる取り組みの必要性が浮き彫りになりました。
処遇改善加算取得率89.9%、着実な制度定着
今回の調査は全国1万3806の障害福祉サービス事業所・施設を対象に2025年8月に実施され、50.2%に当たる6937事業所から有効回答を得ました。調査結果は同日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームに報告されました。
処遇改善加算の取得状況を見ると、2025年7月時点で89.9%の事業所が処遇改善加算を取得していることが判明しました。内訳では「加算Ⅰ」が54.6%、「加算Ⅱ」が18.7%となり、この上位2つの加算で73.3%を占める状況です。
平均給与33万3340円は、基本給や各種手当、ボーナスなどを全て含んだ税引き前の総支給額です。ボーナスや一時金については、2025年4月から7月に支給された総額の6分の1が上乗せされており、いわゆる手取り額ではない点に注意が必要です。
「5%以上の賃上げは評価できるが、まだまだ一般企業には追いついていない」
「処遇改善加算があっても、実際に働いている人の負担は軽くなっていない」
「給与は上がったけど、人手不足で仕事がきつくて長続きしない職場が多い」
「障害福祉の現場で働く人たちの待遇改善は急務だと思う」
「調査に回答しない事業所の実態が気になる。本当はもっと給与が低いのでは」
2024年制度改革で処遇改善加算が一本化
今回の給与上昇の背景には、2024年6月から実施された処遇改善に関する制度改革があります。従来の「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの制度が「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化され、加算率の引き上げも行われました。
新制度では4つの区分(加算Ⅰ〜Ⅳ)に整理され、より高い加算を取得するためには、経験技能のある職員の配置や年額440万円以上の賃金改善、職場環境の改善などの要件を満たす必要があります。政府は2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップにつながるよう加算の充実を図りました。
制度一本化により、事業者にとって分かりやすい仕組みとなった一方、より厳格な要件設定により、質の高い処遇改善の実現を目指しています。加算Ⅳの加算額の2分の1以上を月額賃金(基本給または毎月支払われる手当)として支給することが全区分の共通要件となっており、確実なベースアップの実現を促しています。
一般企業との格差解消に向けた課題指摘
有識者会議では、今回の調査結果を受けて複数の重要な課題が指摘されました。最も注目されたのは、「一層のベースアップなど一般企業との賃金格差の解消に向けたさらなる検討をすべき」との意見です。
障害福祉分野の賃金水準は、全産業平均と比較すると依然として低い状況が続いています。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、全産業の平均賃金と障害福祉関係職員の賃金には相当な開きがあり、人材確保の大きな阻害要因となっています。
さらに深刻な問題として、調査の回収率が50.2%にとどまったことが挙げられました。委員からは「約半数が回答していない。回答していない事業所・施設の給与水準が低いなどのバイアスも考えられる」との指摘がありました。
この指摘は統計学的に重要な視点です。一般的に、給与水準の高い事業所ほど調査への協力に積極的であり、給与水準の低い事業所は回答を控える傾向があります。そのため、実際の業界全体の給与水準は、今回の調査結果よりも低い可能性が指摘されています。
人材確保と離職防止の根本的課題
障害福祉分野では慢性的な人手不足が続いており、処遇改善は人材確保と離職防止の重要な施策として位置づけられています。しかし、給与上昇だけでは解決できない構造的な問題も存在します。
職場環境の改善も重要な課題です。新しい処遇改善加算では、職場環境等要件として、資質向上の支援や福利厚生の充実、業務効率化による負担軽減、職員の健康維持支援などが求められています。これらの要件は、単なる賃金改善にとどまらず、働きやすい職場づくりを促進することを目的としています。
また、障害福祉人材確保・職場環境改善等事業補助金も創設され、処遇改善加算と併せて活用することで、より包括的な職場環境の改善を図る仕組みが整備されました。この補助金を申請している事業所では、職場環境等要件の適用が猶予される措置も設けられています。
今後の課題として、制度の更なる充実とともに、業界全体の賃金水準の底上げ、働き方改革の推進、キャリアアップ支援の強化などが求められています。特に、一般企業との賃金格差解消は、優秀な人材を障害福祉分野に呼び込むための喫緊の課題となっています。
厚生労働省では、次回の報酬改定に向けて、今回の調査結果や有識者の意見を踏まえた検討を進める方針です。障害福祉サービスの質の向上と人材確保の両立を図るため、処遇改善の一層の推進が期待されています。