2025-11-25 コメント投稿する ▼
障害福祉職員月給4.5%増も全産業格差7万円 2026年度報酬臨時改定で処遇改善
2024年度には「福祉・介護職員等処遇改善加算」が創設され、従来の3種類の処遇改善加算が一本化されましたが、まだその効果が十分に現れていない状況です。 厚生労働省は、2024年6月施行の「福祉・介護職員等処遇改善加算」の効果が調査に十分反映されていないことや、同加算未取得の事業所も含まれていることが影響していると説明していますが、根本的な解決には報酬水準の抜本的見直しが不可欠です。
深刻化する人材不足に歯止めを
障害福祉職員月給4.5%増も全産業との格差拡大 2026年度臨時改定で処遇改善強化へ
厚生労働省とこども家庭庁が11月25日に発表した調査結果によると、障害福祉施設・事業所で働く職員の2025年7月平均月給は26万730円となり、2024年9月比で4.5%の増加を記録しました。しかし、全産業平均の33万400円との格差は約7万円に及び、人材確保の困難さが浮き彫りになっています。
処遇改善効果は限定的、格差は拡大傾向
今回の調査は、全国約7000カ所のグループホームや重度訪問介護事業所のうち、職員の賃上げ時に障害福祉サービス報酬が加算される制度を利用した事業者を対象に実施されました。月給26万730円という水準は、2024年の賃金構造基本統計調査での全産業平均33万400円と約7万円の開きがあります。
特に深刻なのは、この格差が縮小されていないことです。福祉新聞の報道によると、2024年の障害福祉職員賃金は30万8000円で全産業平均38万6000円より7万8000円低く、2023年の6万5000円差から1万3000円も差が拡大しています。
2024年度には「福祉・介護職員等処遇改善加算」が創設され、従来の3種類の処遇改善加算が一本化されましたが、まだその効果が十分に現れていない状況です。
事業所の経営状況も厳しさ増す
調査では事業所の経営実態についても明らかになっています。2024年度の全サービス平均利益率(収支差率)は4.6%となり、前年度から0.4ポイント減少しました。物価高騰や人件費上昇の中で、事業所の経営も厳しさを増している状況が確認されています。
東京商工リサーチの調査では、2024年1月から8月における介護事業者の倒産件数は114件となり、前年同期比44.3%増となっています。新型コロナウイルス感染拡大の影響に加え、物価高の直撃を受けた結果です。
「4.5%上がったといっても、まだまだ他業界との差は大きい」
「処遇改善加算があっても、事業所の経営が苦しくて十分に活用できない」
「人手不足で一人あたりの負担が増えている。給料も上がってほしい」
「障害福祉の仕事にやりがいを感じているが、生活を考えると転職も考える」
「報酬改定が頻繁すぎて事務負担が重い。現場に集中したい」
2026年度臨時改定で抜本的改善目指す
この状況を受け、政府は2026年度に障害福祉サービス報酬の臨時改定を実施する方針を固めています。通常は3年に1度の改定サイクルですが、次回予定の2027年度を前倒しして、処遇改善に特化した緊急措置を講じることになります。
2024年度の報酬改定では、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%の職員ベースアップを可能にする措置が盛り込まれましたが、今回の調査結果を踏まえ、さらなる対策が必要と判断されました。
厚生労働省は、2024年6月施行の「福祉・介護職員等処遇改善加算」の効果が調査に十分反映されていないことや、同加算未取得の事業所も含まれていることが影響していると説明していますが、根本的な解決には報酬水準の抜本的見直しが不可欠です。
人材確保策の充実が急務
障害福祉分野の人材不足は深刻な状況が続いています。独立行政法人福祉医療機構の2023年度調査では、障害福祉事業所の52.6%が「職員が不足している」と回答し、2020年度調査から2.4ポイント上昇しています。
特に訪問系サービスの人材不足は深刻で、2024年度改定では訪問系サービスに高い加算率が設定されましたが、根本的な処遇改善なしには人材確保は困難な状況です。
国は制度改正を重ね、2025年度を大きな節目として福祉・介護職員の処遇改善を推進する方針ですが、事業所が安定的に人材を確保し質の高いサービスを提供するためには、処遇改善加算の取得促進と適切な運用が欠かせません。