「妻を支える主夫」へ転身　立憲民主党・寺田学氏が今期限りで政界引退へ

寺田学氏の引退表明と理由

立憲民主党の寺田学衆議院議員（48、比例東北）は、次の衆議院選挙には立候補せず、現在の任期で政界を退く意向を固めた。妻である寺田静参議院議員（50、無所属・秋田選挙区）との二人三脚の国会活動を続けながら、小学6年生の長男（12歳）の育児と80代の母の介護を両立するのが困難であるという判断による。寺田学氏自身が「主夫」として、家庭中心の生活に切り替える意志を明らかにしている。

寺田学氏によれば、これまで夫妻は、東京および地元秋田での政治活動や国会活動をする中で、どちらかが子どもの食事準備など家事を担ってきた。ベビーシッターを使わず、「父親として育児に携わりたい」との思いから、長男を地元入りに連れて行くこともあった。しかし近年は部活動のサポートが増え、家庭の時間を確保する難度が上昇していた。

母親の介護については、体力の衰えが深まる中で、学氏の姉が過労で倒れたことも契機となった。そのため母は介護施設に入ったものの、定期的な家族のケアが依然必要だという。

政治家としてのキャリア

寺田学氏は衆議院に7回当選。過去には菅直人内閣で首相秘書官を務め、東日本大震災の対応にも関わった。最近では衆議院政治倫理審査会の野党筆頭幹事として、自民党議員の「政治とカネ」問題をめぐる聴取に関与した実績がある。

妻の寺田静氏は、寺田学氏の元公設秘書であり、参議院議員に転じており、2025年7月の参院選で2期目の当選を果たしている。夫妻は政策面でも協力しており、静氏の子育て政策などは与野党を超えて注目されてきた。

夫婦・家庭と政策の交錯

寺田学氏は、妻から「議員を続けてほしい」と言われたこともあったが、夫妻で話し合った結果、静氏の政治活動を優先する方針を選んだという。長男の学校や部活動への関わり、母の介護体制を考慮して、寺田学氏自身が主に家事・育児・介護を担うと決めた。

また引退を決めた理由の一つに、次期選挙に向けた活動を十分にできないことが挙げられている。党内での人事を相談された際にも、その意向を立憲民主党代表の野田佳彦氏に伝えており、驚きをもたらしたという。

社会的含意と政策との関連

この決断は家庭・育児・介護と政治活動の両立がいかに困難かを改めて示した。特に政治家の夫婦双方が活動するケースでは、一方がキャリアを犠牲にする例が多い中で、夫が主に家庭を支える選択をした点が注目される。

この件は政策の議論とも重なる。例えば育児支援制度や介護制度の充実、両立支援政策の強化が改めて課題となる。与党・野党双方が家庭の役割分担や支援の制度設計を見直す可能性がある。

また、寺田学氏の引退表明は、日本の政治文化におけるジェンダー役割のあり方を問い直す契機となる。政策論点として、育児休暇や介護休暇制度、家事育児の社会的価値の再評価が求められている。

結論として、寺田学氏の引退は、個人の家庭事情であると同時に、政治制度と社会制度が家庭と仕事をどう支えるべきかに関する示唆を含んでいる。