2025-07-11 コメント投稿する ▼
「外国人優遇」は事実か?米山隆一氏が指摘する誤解と排外主義の危うさとは
米山隆一氏が警鐘 「外国人優遇」論に根拠なしと指摘
参院選を前に、保守系政党を中心に「外国人が過度に優遇されている」とする主張が繰り返されている。しかし、こうした言説に対して疑問を呈したのが、元新潟県知事で衆議院議員の米山隆一氏だ。X(旧Twitter)にて、彼は次のように投稿した。
外国人が過度に優遇されているという言説を自民、国民民主、参政、保守などが訴えていますが、それが事実でない事を丁寧に解説した良記事。①外国人犯罪率は日本人と同程度②博士課程の生活費支援は日本人も同じく対象で全く優遇ではありません。排外主義は国を危うくします。
この投稿が指摘するのは、事実に基づかない外国人排除の風潮と、それに伴う社会の分断だ。ここでは、米山氏の主張の根拠を掘り下げながら、問題の背景と今後の課題を探る。
外国人犯罪率は「同程度」:数値で見る現実
一部政治家やメディアでは「外国人による犯罪が急増している」との声も上がっているが、統計的にはその主張を裏付ける材料は乏しい。警察庁などの公的データによれば、日本国内での在留外国人の犯罪検挙率は0.3%前後。一方、日本人の検挙率は約0.2%と、若干の差こそあれ大きな乖離はない。
つまり「外国人だから危険」という前提自体が、データから見て正当とは言い難い。
また、近年の外国人検挙件数はむしろ減少傾向にある。たとえば2010年以降、在留者数が増える一方で、刑法犯全体の検挙件数は減少しており、外国人による著しい治安悪化の兆候は見られない。
生活費支援は日本人も対象 誤解が生む「優遇」批判
もう一つの焦点が、大学院博士課程の生活支援制度をめぐる議論だ。米山氏が言及するように、「日本人学生が支援されず、外国人ばかりが支援されている」という批判が広がっている。
だが、これは事実と異なる。文部科学省の「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」は、博士課程に在籍する学生全体を対象に、年間最大290万円を支援する制度であり、日本人も当然その対象に含まれている。
実際には、博士課程進学者が減少するなかで、日本人の応募者が少なく、結果的に中国や韓国を中心とする留学生の割合が増えているという構図だ。受給者に占める外国人の割合が多いことは事実だが、それは制度の趣旨に反しているからではなく、日本人学生側の応募数の問題でもある。
文科省は制度見直しへ 2027年度から「生活費部分は日本人限定」に
この制度に対しては、世論の批判や政治的圧力も影響し、文科省は生活費部分(年240万円)を将来的に「日本人限定」とする方向で制度の見直しを進めている。ただし、研究活動費部分(年50万円程度)は今後も外国人学生を含む全学生が対象となる見通しだ。
制度の趣旨としては「経済的な理由で研究の道を断念する人を支援すること」が目的であり、対象が外国人であるかどうかは本質的な論点ではない。
排外主義の風潮が社会を分断する
米山氏が特に強調しているのは、「排外主義が国を危うくする」という視点だ。
排外主義は国を危うくします。
これは過去の歴史に学んでも重い言葉だ。事実に基づかず、単なる感情や不安から特定の集団を攻撃する風潮は、社会の対立を深めるだけでなく、民主主義の健全性をも損ねる。
外国人を「優遇されている」と見なす言説は、たとえ一部に事実が含まれていたとしても、誤解や偏見によって増幅される。その過程で、「支援を必要とする人」への理解が後回しになり、政策の本質が見失われる恐れがある。
データと議論のバランスが問われる今
日本社会が直面する少子化・人材不足・科学技術力の低下といった課題に対し、外国人材の受け入れや国際化は不可欠な要素だ。研究・技術分野においては、優秀な外国人学生が大学や企業に貢献するケースも少なくない。
制度の公正さと社会の納得をどう両立させるか。そのためには、感情論に流されず、正確なデータに基づいた議論が求められる。
「優遇」ではなく「共に支える」社会へ
米山隆一氏の指摘が示す通り、現在の日本において「外国人が特別扱いされている」という主張は、事実としては成立しにくい。
外国人犯罪率は日本人と同程度」「博士課程の生活費支援は日本人も同じく対象
この二つの根拠は、感情的な議論から距離を取り、冷静な社会的合意を築く第一歩だ。今、必要なのは誰かを排除することではなく、制度をより良くし、誰もが納得できる社会をつくるための事実に基づいた議論だろう。
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この問題に対する関心が高まっている今こそ、表面的な「優遇」論ではなく、深く根ざした社会構造や教育制度の課題と向き合うことが求められている。