2025-04-15 コメント投稿する ▼
尾辻かな子議員「声を上げた人を守る法に」――公益通報者保護法改正案の実効性に疑問
勇気ある通報者を守る仕組みにできるか
尾辻氏はまず、現行制度の構造的な問題点を指摘した。公益通報をして不利益を受けた人が救済を求めるには、自ら裁判を起こす必要があるが、その負担は精神的にも経済的にも大きい。「一人で会社を相手取って闘うのは並大抵のことではない。声を上げる人のハードルがあまりに高すぎる」と語った。
「通報後の嫌がらせや配置転換は放置?」
今回の改正案では、不利益な取り扱いのうち「解雇」や「懲戒」だけに刑事罰が科される内容となっている。だが尾辻氏は、「通報者が現場で直面するのは嫌がらせや配置転換が圧倒的に多い。これが刑事罰の対象にならないのはおかしい」と批判。「声を上げたことを理由に、職場で居場所を奪われるような行為も厳しく取り締まるべきだ」と訴えた。
森友・兵庫県の事例から浮かぶ深刻な課題
尾辻氏はさらに、過去に公益通報が十分に機能しなかった実例として、森友学園をめぐる財務省文書改ざん事件や、兵庫県で起きた文書通報者への探索・懲戒処分問題を挙げた。
「赤木俊夫さんが命を絶った背景には、組織からの強い圧力と、公益通報者を守る制度の不備があった。こうした悲劇を二度と起こしてはならない」と強調。また兵庫県のケースでは、第三者委員会が通報者に対する処分を違法と認定しているにもかかわらず、県知事が探索行為を主導したことに言及し、「自治体に対しても、消費者庁がしっかり指導できる仕組みにすべきだ」と求めた。
通報者の“仲間”も守るべき存在
尾辻氏は、今回の改正でフリーランスなどの通報者が新たに保護対象に加えられた点は評価しつつも、まだ足りないと指摘する。「取引先の事業者や、通報者を支援する同僚も、報復を受ける可能性がある。こうした人たちにも保護が必要だ」と提案した。
報復の証拠を集めたら違法?
通報者が不正の証拠を収集して報道機関などに提供した場合、守秘義務違反に問われかねない現在の制度も問題視。「真実を明らかにするために必要な証拠を集めただけで処罰されるようでは、誰も声を上げられなくなる。免責規定が必要だ」と訴えた。
「立証責任は企業側に」―世界の潮流にも言及
また、改正案では通報後1年以内に解雇や懲戒処分された場合に限り、企業側が「通報が理由ではない」と立証する責任を負う仕組みが導入された。しかし尾辻氏は、「これも解雇や懲戒だけに限定されていて、配置転換などは除外されている。韓国やEUのように、あらゆる不利益処分について立証責任を企業に転換すべきだ」と力を込めた。
「通報してももみ消される」―制度の信頼性がカギ
通報者が安心して声を上げられるようにするには、企業に対する監視体制の強化も不可欠だとし、立入検査の強化を評価しつつも、「消費者庁に実際どれだけの職員が公益通報の対応をしているのか。予算や人員の増強がなければ、実効性が担保されない」と懸念を示した。
「今のままでは通報者が報われない」
尾辻氏は、自身が接した内部通報者の例として、通報後に長年配置転換を受けながらも8年間かけて裁判で勝訴した事例を紹介し、「勝訴しても元の部署には戻れなかった。これが日本の現実だ」と吐露。「費用の出るADR(裁判外紛争解決制度)や、米国のような報奨金制度の導入も、議論すべき時だ」と語った。
最後に尾辻氏は、「本当に通報者を守る制度にするには、もっと踏み込んだ修正が必要だ」とし、法案の修正を強く要請。「命を懸けて声を上げた人を、国が見捨ててはいけない」と結び、質疑を終えた。