2025-04-01 コメント投稿する ▼
被災者支援の新たな形へ――災害対策基本法等改正案のポイントと課題
■ 被災者支援の新しい考え方
これまでの災害対応では「場所」の支援が中心でしたが、今回の改正では「人」の支援へと軸足を移すことが提案されています。具体的には、避難所以外で生活する被災者に対して福祉的支援を行うため、災害救助の対象に福祉サービスを加え、災害派遣福祉チーム(DW)の活動を強化する方針です。
■ 要配慮者への支援を拡充
高齢者や障がい者など、特に配慮が必要な人々への支援を強化することも今回の改正のポイントです。災害時だけでなく、平時からの支援体制を整え、地域での連携を深めることが求められています。
■ 官民連携の強化と指定公共機関の拡大
東日本大震災当時57だった「指定公共機関」を106に増やし、民間企業やNPOと協力しながら、より強固な災害対応を目指します。防災推進国民会議などを活用し、官民が一体となって取り組む体制を整えます。
■ 専門団体の登録制度を創設
災害時に必要な専門知識を持つ団体を事前に登録し、自治体と情報共有できる仕組みを作ります。これにより、発災時に速やかに支援団体を現地へ派遣できるようになります。また、自治体が登録団体に業務を委託する際の手続きを明確にし、スムーズに協力できる環境を整えます。
■ 訪問型支援と災害ケースマネジメント
発災直後から、一人ひとりに寄り添った支援を行うための「災害ケースマネジメント」を強化します。具体的には、被災者の状況を個別に把握し、最適な支援が受けられるようにするための手引を作成し、普及を進めます。
■ 避難所の環境改善
避難所の環境をより快適なものにするため、自治体向けの指針を見直し、トイレの数やスペースの確保などの基準を改定します。また、新地方創生交付金を活用して、自治体の避難所改善の取り組みを支援する方針です。全国のトイレカーやキッチンカーのデータベースを整備し、避難生活支援のための研修も拡充していきます。
■ 災害ボランティアの役割強化
櫛渕議員は、災害ボランティアの重要性を指摘し、NPOの代表を中央防災会議や災害対策本部の正式なメンバーに加えるべきだと提案しました。また、現在の制度では知事の協力命令がないと活動費が支給されないため、命令がなくても最低限の活動経費(機材・燃料・宿泊費・人件費など)が確保される仕組みを作るべきだと訴えました。
さらに、イタリアでは災害ボランティアに休業手当や保険が支給されていることを例に挙げ、日本でも平時から研修や訓練を実施し、災害対応能力を高めるべきだと主張しました。特に、災害NPOの財政状況が平時と災害時で大きく異なることから、経験のある人材を継続的に雇用できるような支援が必要だと強調しました。
■ 罰則付き従事命令の見直し
災害救助法には、医療関係者や建設・輸送業者に対して罰則付きで従事を命じる規定がありますが、櫛渕議員は「このような強制的な規定は現代にはそぐわない」として、撤廃を求めました。政府は「人命救助のための最後の手段としての規定であり、実際に適用された事例はない」と説明しましたが、今後の見直しが求められそうです。
■ 防災省の創設
最後に、櫛渕議員は「災害対応を一元的に管理する防災省の設置が必要ではないか」と提案しました。政府は現時点での具体的な検討には言及しませんでしたが、今後の議論が注目されます。