2025-11-12 コメント投稿する ▼
高市政権、モーリタニアに4億円食糧援助 砂漠国家の食料危機対応 TICAD公約を具体化
高市早苗政権は2025年11月11日、アフリカのモーリタニア・イスラム共和国において主要食料品の価格高騰などで国民への影響が拡大しているとして、4億円の無償資金協力による食糧援助を実施することを発表しました。 この支援は、モーリタニアの食料安全保障の確保を目的として実施されるものです。
この支援は、モーリタニアの食料安全保障の確保を目的として実施されるものです。外務省の見解によると、モーリタニアは国土の約9割が砂漠地帯であり、十分な耕作地が存在しないため恒常的に深刻な食糧不足に陥っており、さらに大干ばつや主要食料品の価格高騰により国民への影響が拡大している状況にあります。
砂漠国家の深刻な食料事情
モーリタニア・イスラム共和国は西アフリカに位置し、総人口約465万人を抱える低中所得国です。同国では農業が労働人口の約55%が従事する重要な産業でありながら、国土の大部分が砂漠地帯に属するという極めて厳しい環境の中で営まれています。耕作可能な地域は同国南部のセネガル川流域に限られており、食料総需要の約60%を輸入に依存する構造的な食料不足の状況にあります。
さらに、2003年以降は毎年同国の南部及び東部において干ばつが発生し、食糧不足を深刻化させています。気候変動の影響により、これらの自然災害は頻発化・激甚化の傾向にあり、同国の食料安全保障にとって大きな脅威となっています。
近年は、世界的な食料価格の高騰も同国の食料事情に深刻な影響を与えています。輸入依存度の高い同国では、国際市場での価格上昇が直接的に国内の食料価格に反映され、特に低所得層の生活に大きな打撃を与えています。
「アフリカ諸国への人道支援は重要だ」
「食料援助は命に直結する支援だ」
「砂漠化の進行は深刻な問題だ」
「海外援助は国益説明が必要だ」
「継続的な支援体制が必要だ」
TICAD公約の具体化として実施
今回の食糧援助は、2022年8月に開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)において日本が表明した食料危機対応への取組を具体化するものです。同会議では、アフリカ諸国の食料安全保障強化と持続可能な農林水産業の支援に取り組むことが約束されており、モーリタニアへの支援はその重要な一環として位置づけられています。
また、この支援は高市政権が掲げる「危機管理投資」の考え方とも整合しています。食料安全保障は国家安全保障の重要な要素であり、アフリカ地域の安定化を通じた国際平和への貢献という観点からも意義があります。
日本とモーリタニアの間では、1960年の同国独立を受けて同年11月29日に国交を開始して以来、65年にわたる友好協力関係を築いてきました。2009年には在モーリタニア日本国大使館が開館され、二国間関係の更なる発展が図られています。
継続的な支援実績と今後の展望
日本はこれまでもモーリタニアに対して継続的な食糧援助を実施してきました。過去の事例を見ると、2004年には砂漠バッタの異常発生による深刻な食糧危機に対応して3億円の食糧援助を実施し、その後も定期的に同様の支援を行っています。
2023年11月には漁業調査船建造計画28.75億円と食糧援助6億円の無償資金協力を実施するなど、同国の基幹産業である水産業の発展支援と並行して、食料安全保障の確保に向けた包括的な協力を展開してきました。
モーリタニアは水産物(タコ及びイカ)と鉄鉱石の輸出に経済を依存しており、2025年からはセネガルとの両海域にまたがる海底ガス田「グラン・トルチュー・アハメイム」の液化天然ガス生産が開始される予定です。しかし、農業分野の脆弱性は根本的な課題として残っており、継続的な国際支援が必要な状況です。
国益と人道支援のバランス
一方で、海外援助においては国益の明確な説明が必要不可欠です。モーリタニアはサヘル地域の安定化にとって戦略的に重要な位置にあり、同国の社会安定は地域全体の平和と安全に直結しています。食糧不足による社会不安は、テロリズムや難民問題の温床ともなりかねず、これらを未然に防ぐ予防外交としての意義があります。
また、日本製品や技術の海外展開機会の創出、将来的なエネルギー協力の基盤構築など、長期的な経済協力の観点からも一定の効果が期待されます。ただし、こうした戦略的な効果について国民への十分な説明を行い、ポピュリズム外交に陥ることなく、真に国益に資する対外協力を実施することが重要です。
今回の4億円の食糧援助は、人道的な観点からの緊急支援であると同時に、アフリカ外交における日本のプレゼンス向上と、国際社会における責任ある国家としての地位確立に寄与するものと位置づけられています。
政府は今後も、モーリタニアの食料安全保障改善と持続可能な開発に向けて、技術協力や人材育成支援なども含めた包括的な協力を継続していく方針です。