2025-08-29 コメント投稿する ▼
与那国町長「ハイマース搬入は容認できない」 日米訓練と住民不安が突きつける課題
与那国町長 ハイマース搬入「容認せず」
沖縄県与那国町で来月計画されている日米実動訓練「レゾリュート・ドラゴン(RD)25」を巡り、米軍の高機動ロケット砲システム「ハイマース」初展開が検討されている問題で、上地常夫町長は29日、「報道されている内容では容認できない」と明言した。町長は八重山日報の取材に対し「選挙の公約でもあり、この島にそうした武器を持ち込む訓練はなじまない」と強調し、搬入に反対する立場を示した。
この日、防衛省の担当者が町を表敬訪問したが、訓練の詳細説明はなく「9月5日に改めて説明を受ける」としている。町長は「日米共同訓練そのものを否定するつもりはないが、内容によって判断する」とし、駐屯地内や図上訓練であれば容認の余地があるとも語った。
島の安全と住民生活への懸念
与那国島は日本最西端の国境の島であり、地理的に台湾にも近いことから、近年の安全保障環境を踏まえて防衛強化の動きが進んでいる。しかし、島の規模や住民生活を考慮すれば、大型兵器の搬入は生活環境への影響や万一の有事の際のリスクを高めるとの不安が根強い。
地元住民の間でも賛否が分かれている。
「島の安全がかえって危険にさらされる」
「生活環境にそぐわない兵器は持ち込むべきではない」
「国防は理解するが説明不足が不信感を招いている」
「訓練するなら島内に閉じた形でやるべき」
「島民の声を無視して配備を進めるのは許されない」
防衛強化と地方自治のはざまで
防衛省は南西諸島防衛の一環として、沖縄各地での訓練や部隊配置を強化している。石垣島や宮古島にも陸自部隊が配備され、与那国にはすでに沿岸監視部隊が駐屯している。しかし、地域住民への説明不足や合意形成の欠如が課題として浮かび上がっている。
一方で、日米両政府は台湾海峡や東シナ海での緊張の高まりを背景に、抑止力の強化を急いでいる。ハイマースはウクライナ戦争でも実戦投入され、その射程と機動力が注目を集めた兵器である。日本国内での初展開は象徴的な意味を持つが、その分、地域社会に大きな負担を強いることになる。
ハイマース搬入反対が突きつける課題
今回の町長の「容認せず」という明言は、単なる一自治体の判断にとどまらず、国の防衛政策と地方自治の関係を改めて問い直すものとなっている。国防上の必要性と地域社会の安心をどう両立させるのか。石破政権が掲げる「国民に寄り添う政治」の実践が試されている。
説明責任を欠いたまま兵器の搬入を進めれば、住民との信頼関係は崩れる。与那国島の事例は、今後の南西諸島防衛のあり方を占う試金石となるだろう。