2025-08-20 コメント投稿する ▼
奈良市で3万8千人が対象 定額減税の追加給付が示す「時限的減税」の限界と恒久減税の必然性
奈良市で始まる定額減税の追加給付
政府が令和6年に実施した定額減税は、物価高騰対策の柱として位置付けられた。しかし、当初の制度設計では、所得状況の変化や扶養家族の増加などにより「減税しきれない人」が相当数発生することが予想されていた。その結果、奈良市だけでも約3万8千人が対象となり、追加給付に充てるため4億2千万円の補正予算が市長の専決処分で決定された。8月の臨時市議会で報告される予定である。
奈良市は近く通知書の送付を開始し、振込口座の変更などにも対応する見込みだが、その分自治体職員の事務作業が大幅に増えることになる。定額減税が本来「減税による簡素な支援策」として設計されたにもかかわらず、最終的には給付金と同様の事務負担が押し付けられる形となっており、自治体現場からは不満の声も上がっている。
「減税のはずが結局は給付と同じ事務負担になっている」
「国民は減税を求めているのに、複雑な給付金で誤魔化されている」
「市町村の人員不足の中でこれ以上の作業は酷だ」
「一度で済む制度設計にできなかったのか」
「減税ではなく給付金頼みはバカのひとつ覚えだ」
制度の仕組みと追加給付の背景
定額減税は、高額所得者を除く納税者および扶養家族一人につき、所得税と住民税が合わせて最大4万円軽減される仕組みだ。ところが令和5年の所得を基準に推計したため、翌年に失職や転職をした人、子供が生まれて扶養家族が増えた人などは、当初の見込み額よりも減税額が足りなくなるケースが出てきた。
政府はその場合、追加給付を行うことで不足分を補うとしたが、給付を繰り返すことで制度が複雑化し、自治体の事務負担が予想以上に膨らんでいる。特に、金融機関口座の確認や変更対応といった細かい作業が追加で発生するため、自治体の現場は「減税の簡便さ」が失われていると感じている。
自治体にのしかかる事務負担
奈良市が見込む対象者3万8千人という規模は、市の人口の約1割強にあたり、その一人ひとりに通知を出し、口座確認を行い、入金処理をする必要がある。これに要する事務コストや人員の負担は甚大だ。
定額減税は本来、給付金のように自治体が手間をかけずに、税制上で自動的に減税することで国民に還元するはずだった。ところが実態は「減税しきれない人」を対象とする追加給付という形になり、自治体が再び事務の最前線を担う状況に追い込まれている。これは、過去の一律給付金の際に指摘された「国の政策のツケを自治体に回す構図」と変わらない。
「国は制度を作るだけで、実務は自治体任せ」
「減税と給付を二重にやるのは非効率」
「人件費や時間のコストを国民は知らされていない」
時限的な減税の限界と恒久減税の必要性
今回の定額減税と追加給付の混乱は、「時限的な減税」の持つ限界を如実に示している。短期間の減税は一時的な負担軽減にはなるが、所得の変動や扶養の増減といった生活の変化に十分に対応できず、結果的に複雑な給付で調整する事態を生んでいる。
日本の国民負担率は先進国の中でも高水準にあり、家計への圧迫感は強まる一方だ。こうした状況で求められるのは、恒久的な減税によって税負担そのものを軽減し、安定的に家計を支える仕組みである。財源探しに終始して一時的な施策を繰り返すのではなく、歳出削減を徹底し「持続的な減税」を可能にすることこそ、国の財政運営に必要な視点といえる。
奈良市で始まる定額減税の追加給付は、約3万8千人という対象者の多さと4億2千万円という予算規模で注目を集めている。しかしその裏では、自治体職員の負担が増大し、減税のはずが給付金と変わらない煩雑さを生んでいる。時限的な減税はこのような弊害を生みやすく、国民負担率が高すぎる現状を踏まえれば、恒久的な減税こそが不可欠である。