守谷市が2023年に取得した「旧アジュール」跡地の活用をめぐって、市民の間で戸惑いや疑問の声が広がっている。市はこの土地に、英語を共通語とする海外留学生向けの中高一貫校を誘致する計画を進めており、2月には優先交渉権者として「学校法人能達学園」を選定した。しかし、市民向けの説明会は一度も開かれておらず、急な展開に不信感が募っている。
計画の概要
- 取得した土地は、旧結婚式場「アジュール」やWonderGOO跡地などを含むエリアで、正式名称は「松ヶ丘六丁目地内事業用地」。
- 市は2025年4月以降、この土地を賃貸し、海外からの中高生を受け入れる私立校の建設を目指している。
- 授業は英語で行われ、敷地内には学生寮も併設される予定。定員は660人。
事業者への不安
この計画の大きな懸念点のひとつが、事業者の信頼性だ。優先交渉権を得た「能達学園」は、設立からわずか数年の学校法人で、現在運営しているのは専門学校1校のみ。財務基盤も盤石とは言えず、市議会でもその点がたびたび指摘されている。
「市有地という貴重な資産を、実績が乏しい法人に託していいのか?」――市民の間では、こうした疑問が渦巻いている。
生徒の進路は?
もうひとつの課題は、卒業生の将来像が見えないことだ。この学校は「各種学校」に分類される予定で、日本の高校卒業資格を得ることはできない。国内の大学に進学するには「高卒認定試験」をクリアする必要があり、海外大学進学には国際的な教育プログラムの認証(例:国際バカロレア)が不可欠だ。
しかし、現時点でその認証は取得されておらず、実現する保証もない。進路の見通しが立たなければ、生徒や保護者にとってもリスクは大きい。
地域への影響も
仮に660人規模の留学生が守谷に暮らすことになれば、地域社会にも少なからぬ影響が及ぶ。卒業後に帰国すれば一時的な滞在に留まるが、日本に残って就職や生活を続ける場合、雇用や住環境に変化をもたらす可能性がある。
また、留学生には税制面での優遇措置や社会保障へのアクセスもあるため、市の税収や医療・福祉サービスに対する影響も見逃せない。たとえば、住民税が課されない非課税世帯とみなされれば、各種給付金の対象になる可能性もある。
「異文化交流」や「地域貢献」は本当に実現するのか
市はこの計画の意義として「異文化交流」や「地域への貢献」を強調しているが、具体的な内容は不透明だ。
- 留学生は地域イベントに参加するのか?
- 市民との交流の機会は設けられるのか?
- 地元雇用はどれほど創出されるのか?
さらに、教育事業は非課税であるため、市にとっての財政的なメリットは土地の借地料に限られるとみられる。
市民不在のまま進む計画
最大の問題は、このように重要な土地活用が、市民の声を置き去りにして進められていることだ。市側はこれまで、市民説明会を一度も開催しておらず、交渉権者決定から基本協定締結までのスケジュールもわずか2週間という異例のスピード感で進行している。
公共施設の建設が見送られ、海外留学生向けの学校が建つ――この土地の未来が、市民にとって納得のいくものとなるのか。いま一度、立ち止まり、開かれた議論が求められている。