2025-04-28 コメント投稿する ▼
超高速船ジェットフォイル、クジラ衝突回避で航路変更 監視船も配備へ 久米島オーシャンジェット
超高速船「ジェットフォイル」航路一部変更へ
クジラ衝突回避に向け対策強化 久米島オーシャンジェット下地幹郎会長が発表
久米島オーシャンジェットの下地幹郎会長は4月28日、那覇市内で記者会見を開き、今年11月に就航予定の超高速船「ジェットフォイル」について、クジラとの衝突リスクを回避するため航路を一部変更する方針を明らかにした。主な対象はザトウクジラが集まる水深200メートル以下の海域であり、この海域を可能な限り避ける形で新航路を設定する。併せて、ドローンを搭載した監視船も配備し、クジラの接近状況を随時確認する体制を整える。
航路変更と所要時間の延長
従来計画では、那覇-久米島、那覇-本部の2航路を最短1時間で結ぶ予定だったが、航路変更により所要時間はおおむね1時間半から1時間40分へと延びることになる。これは観光客の利便性を低下させる可能性があり、需要への影響が懸念される。ただし下地会長は「乗客の安全と、海洋生物保護の両立を重視した判断」と強調した。
減速や繁殖期の運休は否定
一方で、航行中の減速や、ザトウクジラの繁殖期にあたる冬季の運休については「現実的ではない」として否定した。下地会長は「減速は超高速船の特性に合わず、運休すれば地域交通の根幹が崩れる」と説明し、あくまで運航継続を前提とする姿勢を示した。超高速船ジェットフォイルは高速性能を前提に設計されているため、一定以上の速度を維持しなければ効率的な運航が難しいとされる。
対策費用は年間1億6600万円
クジラ衝突対策には、年間で1億6600万円の追加費用が見込まれている。ドローン監視、監視船の運用、航路変更に伴う燃料費増加などが含まれる。この結果、事業採算性の悪化は避けられず、関係者からは「持続可能な運航が可能なのか」といった懸念の声も上がっている。特に、クジラの行動は予測が難しく、航路変更や監視だけで完全に衝突を防げる保証はないことから、対策の有効性についても疑問視する向きがある。
背景:沖縄周辺で増えるクジラの目撃例
沖縄近海では近年、ザトウクジラの個体数が増加している。繁殖や子育てのために南下するクジラたちが、那覇周辺や久米島近海にも数多く現れるようになっており、観光資源としてホエールウォッチングツアーも盛んだ。しかし同時に、船舶との衝突事故(いわゆる「ストライク事故」)のリスクも増大しており、国や地方自治体、民間事業者にとって深刻な課題となっている。
下地幹郎会長が主導する久米島オーシャンジェットの超高速船プロジェクトは、自然環境との共存を模索しながら難しい舵取りを迫られている。航路変更による利便性低下、対策コストの増加、そして対策効果への懸念と、多くの課題を抱えた中での船出となるが、観光・交通インフラとして地域に貢献できるかが今後の焦点となりそうだ。