「おにぎりが“あんぱん”に変わったんです」。4月15日、参議院の農林水産委員会でマイクを握ったのは、日本維新の会の松野明美参院議員。NHKの朝ドラが、橋本環奈さん主演の『おむすび』から、今田美桜さん主演の『あんぱん』へとバトンタッチしたことを取り上げ、「社会の流れがパンに傾いているように感じる」とコメ離れに危機感をにじませた。
松野氏は、元陸上オリンピック代表。海外遠征には欠かさずパックご飯と梅干しを持参し、「食べなくてもそばにあるだけで安心だった」と、コメへの深い愛着を語った。
国産米が減っていく現実
今、日本の食卓に静かな変化が起きている。農林水産省のデータによると、日本人1人あたりのコメの年間消費量は、かつての118kg超から、今ではおよそ51kgにまで減っている。背景にあるのは、食生活の欧米化、健康志向の高まり、そして単身世帯の増加など。特に若い世代では、パンやパスタなどが主食として定着しつつある。
松野氏は「最近の外食では、安価な外国産米が使われる例も増えている」と指摘。さらに「外食だけでなく、家庭でもパンや麺にシフトしてしまうのでは」と危機感をあらわにした。
コメの価格高騰も追い打ち
問題を複雑にしているのが、コメの価格だ。2024年には5kgあたりの小売価格が4,000円前後にまで高騰し、前年比で約70%上昇した。猛暑による不作、インバウンド需要の増加、さらには地震や台風に備えた“備蓄需要”も価格を押し上げている。
その結果、外食チェーンやスーパーでは、コスト削減のために外国産米を選ぶ動きが広がりつつある。価格の安さから、国産米のシェアがじわじわと押されているのが現状だ。
政府の対策と課題
こうした動きを受け、農林水産省は「国産米の競争力を高める必要がある」とし、大区画農地の整備やスマート農業技術の導入、米粉やパックご飯の商品開発への支援などを進めている。また、価格対策として2025年3月には備蓄米の市場放出も行われた。
だが、松野氏は「対策を講じるだけでなく、文化としての“米食”を守る姿勢も必要だ」と強調する。特に、学校給食での米飯提供回数が減っていることに言及し、「成長期の子どもたちにとって、ご飯はエネルギー源。試合当日、私が食べていたのもご飯だった」と、経験を交えて語った。
“ジャムおじさん”に負けるな
「朝ドラを見ていたら、パンを美味しそうに食べるシーンが流れていた。ジャムおじさんみたいな人が作っていたんです」。松野氏はユーモラスに語りながらも、最後はこう締めくくった。
「私たちはやっぱり、おコメが大好き。だからこそ、流行に飲まれることなく、米文化を次の世代にもつないでいってほしい」
一見、朝ドラの話題のようでいて、その奥には「日本人の主食を守る」強いメッセージが込められていた。
- NHK朝ドラの題材が「おむすび」から「あんぱん」へと変化
- 松野議員はその変化をコメ離れの象徴と捉え、危機感を表明
- 日本人の米消費量はピーク時の半分以下に減少
- コメ価格の高騰で外国産米の需要が拡大
- 政府はスマート農業や商品開発支援で国産米を後押し
- 学校給食や若年層への米の普及も課題に