2025-03-31 コメント投稿する ▼
生理用品無償化を訴えた三重県議に殺害予告8,000通 吉田紋華氏「声を封じる空気には屈しない」
突然の生理と、投稿のきっかけ
事の発端は3月25日、吉田氏がX(旧Twitter)に投稿した内容だった。突然の生理に見舞われた吉田氏は、立ち寄った津市役所のトイレにナプキンがなかったことを受け、「トイレットペーパーのように、生理用ナプキンをどこでも置いてほしい」と呼びかけた。
この投稿は瞬く間に拡散され、大きな反響を呼んだ。共感の声も多く寄せられた一方、「生理用品を持ち歩かないのは自己責任」といった批判も目立った。中には「用意していない方が悪い」という冷ややかな意見も見られた。
1分おきに届く脅迫 攻撃の意図は「萎縮」
吉田氏によれば、脅迫メールは3月28日夜から、三重県議会の事務局あてに1分おきに送信され始めた。送信元は同じメールアドレスで、件名には「いい歳して非常用ナプキンを持ち歩かない吉田あやか議員を殺害します」と記され、本文では「馬鹿に税金が使われる前に殺してしまえば解決します」との記述があった。
この異常な事態に、吉田氏はすぐに県警津署に被害を届け出た。
「これは明らかに、議員としての活動を萎縮させようとする意図を感じました」と吉田氏。「ジェンダーに対するバックラッシュのようにも思えた」と話す。
「声を封じようとする空気に、私は負けたくない」
会見で吉田氏は、静かだが力強い言葉でこう訴えた。
「女性が声を上げたときに、それをわがままだと決めつけ、黙らせようとする空気があります。でも私は、そういった攻撃に対して黙っていたくない。きちんと声を上げていきたい」
生理をタブー視する空気も依然として根強い。「生理は恥ずかしいものではない。けれど、社会のなかでその認識が追いついていない現状がある」と吉田氏は語る。
投稿後には、若い男性から「この投稿で初めて女性の生理について知った」という声も届いたという。「議論が起こったこと自体は、意味があった」とも話した。
広がる無償提供の動き でも課題も
実際、経済的理由などで生理用品を十分に用意できない「生理の貧困」は深刻な社会課題として、近年注目されてきた。
内閣府の調査によれば、2024年時点で全国926の自治体が、生理用品の無償配布や設置などに取り組んでいる。公共施設のトイレや学校などでの設置が進む一方、まだ十分とは言えない地域も多い。
民間でも、オフィスビルや商業施設のトイレに生理用品を常備する企業が増えており、大王製紙は経済的に困窮する学生向けにナプキンを無償提供する「奨学ナプキン」事業を続けている。
一方で、こうした取り組みが十分に周知されていなかったり、必要な人に届いていなかったりという課題も残る。
世界では「当たり前」に 日本も次の一歩を
世界では、スコットランドが2020年に生理用品の無償提供を法律で義務づけた。カナダやオーストラリアでは、生理用品にかかる消費税を撤廃するなど、行政レベルでの改革が進んでいる。
「生理は誰にとっても起こりうる身体の自然な現象です。誰もが安心して対処できる環境を整えることは、社会の成熟度を示すバロメーターではないでしょうか」と吉田氏は語る。
今回の一件は、個人の経験が社会的な議論を巻き起こし、その中で偏見や攻撃の存在も浮き彫りになった。だが同時に、「声を上げる」ことの意義と、それを支える世論の力も改めて示された。