2025-06-21 コメント投稿する ▼
木原稔前防衛相が防衛産業の迅速化と国産化を提言 スパイ防止法や制度改革も訴え
木原稔前防衛相が防衛産業の強化を提言 「装備品は国家の生存基盤」
6月21日、東京都内で開催された防衛産業シンポジウム「日本を強くする防衛産業」にて、木原稔前防衛相が基調講演を行い、防衛装備品の迅速な開発と国内生産体制の強化を強く訴えた。
木原氏は講演の冒頭、「27万人の自衛隊員と高度な防衛装備品は、わが国の防衛における『車の両輪』だ」と指摘。戦略的な人材確保とともに、防衛装備品の研究・開発・生産を国家の安全保障に直結する要素として位置づけた。
さらに、「有事の際に海外からの部品や装備が途絶するリスクは現実の問題。国内で開発・生産を完結できる体制こそが抑止力の根幹をなす」と強調。国産化によってサプライチェーンの安定を確保しつつ、雇用や技術の国内循環を促す効果も期待できると述べた。
「こういう話をもっと国会で議論すべき。防衛費の使い道を具体的に見せてほしい」
「国内調達の意義って大きい。海外頼みはもう限界」
技術革新のスピードに追いつけない現場 意識改革求める
木原氏は、従来の防衛装備品の開発プロセスにも言及。「設計から配備まで数年単位を要する今の制度では、現在の国際情勢には対応できない」として、研究開発スピードの抜本的見直しを求めた。
特に、民間企業で進むAI、ドローン、センサーなどの先端技術に目を向け、「イノベーションの現場と、防衛現場との間に壁がある限り、必要な装備が必要なタイミングで届かない」と指摘。自衛隊を含めた“運用側”に対して、技術導入への積極性と柔軟性を持つよう求めた。
防衛装備庁などによる予算執行や調達の手続きが複雑で、民間の開発スピードに対応できていない現状に対し、「意識改革と行動変容がなければ、時代の変化に取り残される」と危機感をにじませた。
「軍事と民間の技術共有、もっとスムーズにやれないものか」
「“防衛=旧態依然”のイメージを一新する必要がある」
日本の防衛産業が直面する構造的課題
木原氏の講演は、防衛産業の重要性に対する世論の理解不足にも言及。「防衛産業は企業として利益が出にくい構造にあり、撤退する企業が増えている。これは国家の安全保障基盤の崩壊を意味する」と語った。
その背景には、防衛装備品の調達数量が極めて少数であること、厳しい品質管理要求、入札制度による価格圧縮、納入までの長期サイクルなど、多くの課題が横たわる。加えて、装備品の更新需要が短期的でないため、企業側の投資回収が難しいという現実もある。
一方で、欧米各国では防衛産業への国家的な資本注入と技術支援が進んでおり、日本の制度の硬直性は競争力の阻害要因となっている。木原氏は「国家安全保障戦略の一環として、防衛産業政策を明確に位置づける必要がある」と指摘した。
「『儲からない防衛産業』では、国が守れない」
スパイ防止法、研究開発支援、装備の柔軟調達…本気の改革が急務
講演の終盤、木原氏は「平時の官僚主導型調達」から「戦略的な即応型調達」への転換を求めた。具体的には、防衛装備庁による研究助成制度の拡充、即納可能な装備の民間備蓄、ベンチャー企業との共同開発制度などを挙げた。
さらに「技術流出防止のため、スパイ防止法の整備も急がなければならない」と述べ、防衛装備に関わる高度な技術が海外勢に流出している現実を直視すべきだと訴えた。
「安全保障とは、軍人だけでなく、技術者、製造業、研究者、すべての国民の協力で成り立つものだ」と語り、防衛産業を「国の生存基盤」として捉えるべきだと強調した。
現在、防衛費の増額ばかりが注目されがちだが、装備の中身や、研究・生産基盤の脆弱性にはまだ十分な議論がなされていない。日本の防衛力を実効性あるものとするためには、制度・意識の両面での変革が不可欠だ。