2025-10-31 コメント投稿する ▼
ミサイル配備「説明会予定ない」 高市首相の「絶対大事」発言と矛盾
木原官房長官は、説明会の代わりに「九州防衛局に専用の問い合わせ窓口や専用スタッフを設置した」と説明し、「質問に逐次お答えするなど、しっかりと対応している」と強調しています。 しかし、この対応は根本的な問題を見落としています。 地元首長自らが説明会の必要性を指摘しているのです。 ** 高市首相自身が「住民説明会は絶対大事」と強調したのは、この責務を認識していたからこそです。
対応の矛盾が露呈する――高市首相の発言と木原官房長官の方針の齟齬
木原稔官房長官は2025年11月1日、熊本日日新聞などのインタビューで、防衛省が本年度中に予定する陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市東区)への国産長射程ミサイル配備について「現時点において、住民説明会を実施する予定はない」と明言しました。しかし、この表明は高市早苗首相が2025年9月に示した立場と大きく矛盾しています。高市首相は自民党総裁選に伴うインタビューで「住民説明会は絶対大事。早期に丁寧な説明をすること、適切な情報提供をすることがイロハのイだ」と、説明会開催の必要性を明確に述べていました。
政府内での方針の一貫性の欠如は、国民の信頼を損なうだけでなく、重大な政策決定における透明性の問題を浮き彫りにしています。 敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルの配備という、日本の防衛政策にとって歴史的な転換をもたらす決定が、「説明会予定なし」という言葉で片付けられていいのでしょうか。
住民の不安に応えない「窓口設置」の限界
木原官房長官は、説明会の代わりに「九州防衛局に専用の問い合わせ窓口や専用スタッフを設置した」と説明し、「質問に逐次お答えするなど、しっかりと対応している」と強調しています。さらに、九州防衛局のウェッブサイトでの周知に取り組んでいるとして、「積極的な発信に努めている」と述べました。
しかし、この対応は根本的な問題を見落としています。住民説明会は単なる「質問受け付け窓口」ではなく、政府が地元住民に対して政策の必要性、安全性、懸念事項への回答を一堂に集めて説明する重要な機会です。インターネットの窓口や個別対応では、説明会のような透明性と共有性を持つことはできません。熊本市の大西一史市長は、配備計画の発表時に「唐突感がないようにしていただきたい」と述べ、「市民の不安や疑問を解消するための窓口を置くよう求めました」。地元首長自らが説明会の必要性を指摘しているのです。
「首相は説明会が『イロハのイ』と言ったはずなのに、なぜ説明会をしないのか」
「ウェッブサイトを見ろとは、市民に丸投げしているようなもの。対面で説明してくれ」
「健軍駐屯地は住宅地に囲まれている。被害が出たらどうするのか、説明会で聞きたい」
「国防が重要なのは分かるが、地元住民への説明を逃げるな」
「説明会をしないということは、政府が自信を持っていない証拠ではないか」
国民の声には、政府の対応への根本的な疑問が表れています。
市街地での配備という難しい状況
重要な背景として、健軍駐屯地は熊本市の市街地に位置しており、周辺には学校、病院、住宅が密集しています。射程1000キロ以上の長射程ミサイルが配備されることは、駐屯地周辺の住民にとって新たな安全上の関心事になります。防衛省は「配備先の駐屯地で長期的に運用するのではなく、必要な場所に移動して任務に当たる」と説明していますが、それでも配置や保管、訓練に関する具体的な情報が得られなければ、住民の不安は解消されません。
熊本県の木村敬知事も29日の防衛局説明時に「県民に対し分かりやすく丁寧に説明してほしい」と要望し、「県内の地下避難所が少ない」という課題まで指摘しています。有事の際の対応体制すら不十分な状況で、住民説明会なしに配備を進めることは地域の安全保障に対する政府の責任放棄に見えます。
大義名分と現実のギャップ
防衛省が掲げるのは「南西諸島周辺での中国の軍事的圧力をけん制する」という名目です。国防の重要性は理解できます。しかし、「必要だ」と主張するのであれば、その正当性を国民に丁寧に説明する義務が政府にはあります。 高市首相自身が「住民説明会は絶対大事」と強調したのは、この責務を認識していたからこそです。にもかかわらず、実際の政策運営では説明会を行わないという判断をしている――この矛盾こそが、政府の信頼性を深く傷つけるのです。
市街地での敵基地攻撃能力を持つミサイル配備という、戦後日本が経験してこなかった事態に対して、丁寧な説明なしに進められることは許されません。政府は直ちに住民説明会を開催し、疑念や不安を払拭するための真摯な対話に臨むべきです。そうしてこそ、初めて国民の理解と納得が得られるのです。