2025年3月18日、参議院予算委員会にて、立憲民主党の村田享子議員が通勤手当に関する問題を取り上げ、議論が交わされました。村田議員は、通勤手当が社会保険料の計算にどう影響するか、またその公平性について質問しました。特に、通勤手当の有無で「手取り」が大きく変わる点に注目した内容でした。
通勤手当の社会保険料への影響
村田議員は、通勤手当が社会保険料を算出する際の「標準報酬月額」に含まれるかどうかを問い、厚生労働省の鹿沼保険局長に質問しました。鹿沼局長は、通勤手当が社会保険における報酬に含まれる理由を説明しました。基本的に、社会保険料は賃金、給料、手当など、労働の対価として支払われるすべての金銭を基に計算されるため、通勤手当もその一部として計算されるということです。
通勤手当の支給と社会保険料の差額
次に村田議員は、通勤手当を支給する場合と支給しない場合で、社会保険料にどのような違いが出るかを具体的に質問しました。厚生労働省の説明によると、基本給27万2200円を例にとり、通勤手当が全額支給された場合と支給されない場合で比較しました。
- 通勤手当なしの場合、標準報酬月額は28万円で、健康保険と厚生年金の労働者負担分は約3万9620円。
- 通勤手当15万円を支給された場合、標準報酬月額は41万円に増え、その場合の保険料は約5万8015円。
この結果、通勤手当を支給された場合、毎月約1万8395円の差が生じることになります。年間で換算すると、約24万円の差が出る計算です。
公平性に対する懸念
村田議員は、通勤手当を支給された場合と支給されない場合で社会保険料にこれほど差が出ることが公平ではないと指摘しました。特に、在宅勤務をしている人と出勤している人で、同じ基本給でも手取り額に差が出る点が問題だと訴えました。
村田議員は「せっかく通勤手当が増えても、社会保険料が増えてしまうのは働いている人々にとって不公平ではないか」と強調し、通勤手当を社会保険料の算定から除外するべきではないかとの考えを示しました。
厚生労働省の見解と今後の課題
これに対して、福岡厚生労働大臣は通勤手当の支給が任意であることを前提に、支給される場合は社会保険料の算定に含めることで、被保険者間の負担の公平性を保っていると説明しました。また、通勤手当を社会保険料の対象から除外することについては、他の手当との整合性や公平性に配慮し、慎重に検討する必要があるとの立場を示しました。
村田議員が提案したように、所得税では通勤手当が実費弁償的な性質を持つとして扱われている点についても、社会保険でも同様の扱いにすべきではないかとの質問がありましたが、福岡大臣は、社会保険は税制と異なり、反対給付(傷病手当など)があるため、通勤手当を除外することは難しいという考えを示しました。