和歌山県知事で元国会議員の岸本周平氏が、4月15日に敗血症性ショックのため68歳で亡くなった。長年にわたり国政と地域行政に携わり、国民民主党の結党メンバーとしても知られた岸本氏の突然の訃報に、与野党問わず多くの政治家から追悼の声が相次いでいる。
「国民民主党の今は岸本さんあってこそ」
国民民主党の玉木雄一郎代表は、記者会見で「岸本さんがいなければ今の国民民主党はなかった」と語り、その功績に深く感謝の意を表した。
また、平成21年衆院選で同期当選し、かつて民主党や国民民主党で同じ釜の飯を食った菅野志桜里氏は、「圧倒的な知性をユーモアにくるみ、いつの間にか周囲を説得していく、かけがえのない大人の政治家でした」とSNSに投稿。「日本の中道政治の発展に不可欠な存在を失った気がします」と惜しんだ。
地道な現場主義、「選挙の鬼」と呼ばれて
岸本氏といえば、徹底して現場にこだわる選挙スタイルでも知られた。国民民主党の浅野哲衆院議員は、選対委員長時代の岸本氏の指導について、「羞恥心を捨てろ!」「ドライバーの目の高さで目をのぞき込め!」といったアドバイスを熱く受けたことを紹介。「真剣そのものでした。圧倒されました」と、その熱量を振り返る。
この地道な現場主義が、岸本氏を「選挙の鬼」と呼ばせたゆえんでもある。
「常に地元に寄り添った人」 与野党からも敬意
岸本氏の政治姿勢は、野党時代の議会活動だけでなく、地元・和歌山での活動にも一貫していた。元参議院議員で前首相補佐官の矢田稚子氏は、「毎週末地元に戻り、地元の声を何より大事にしていた」と語り、「ご指導いただいたことを胸に刻み、今後も歩んでいきます」と感謝を綴った。
地元で同じく政治活動をしていた世耕弘成・前自民党参院幹事長も「常に県民に寄り添った姿勢を貫いた政治家だった」と評価し、党派を超えた関係性を偲んだ。
「スキャンダルでなく政策を語る人」 質問に定評
岸本氏の国会での活動について、自民党の牧原秀樹前衆院議員は「中身の濃い、勉強になる質問をする数少ない野党議員だった」とSNSで言及。「スキャンダル追及ではなく、政策で勝負する姿勢が印象的だった」と語った。
立憲民主党の小川淳也幹事長も、記者会見で「かつて民主党政権で苦楽を共にした同志だった。党は分かれたが、敬意と哀悼の意を捧げたい」と話し、その人柄と姿勢に言及した。
岸本周平氏は、大蔵省出身というエリートキャリアを持ちながら、どぶ板選挙に全力を注ぎ、政策でも泥臭く真摯に国民と向き合い続けた政治家だった。その生き様は、政治の在り方そのものを問い直す存在でもあった。
突然の別れに、多くの人が喪失感を抱えている。それは、岸本氏が「ただの政治家」ではなかったことの証しでもある。