2025-04-28 コメント: 1件 ▼
釧路湿原のメガソーラー建設に中止要望 オジロワシなど希少種保護で市民団体が訴え
釧路湿原の太陽光発電所建設に懸念強まる
北海道釧路市に広がる世界有数の湿原地帯・釧路湿原周辺で進められている大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設計画について、市民団体と猛禽類医学研究所が即時中止を求める要望書を釧路市および市教育委員会に提出した。要望の背景には、国の天然記念物であるオジロワシの繁殖環境への深刻な影響が懸念されていることがある。
釧路湿原は、国立公園に指定され、ラムサール条約にも登録された国際的にも貴重な湿地である。平たんな地形と比較的高い日照量を背景に、近年太陽光パネル設置の動きが加速しており、生態系への影響を危ぶむ声が高まっている。
市民団体と専門研究機関が共同で要望書提出
要望書を提出したのは、釧路市内の自然保護を目的とする市民団体と、猛禽類の保護活動を専門とする猛禽類医学研究所。提出は4月28日に行われた。要望書では、オジロワシの営巣地周辺での開発行為の即時停止を求めるとともに、建設計画の全面見直し、湿原に生息する希少生物への影響評価を改めて行うことを訴えている。
さらに、市民団体らは、開発行為の事前規制を強化する条例制定の必要性を指摘し、オジロワシやタンチョウ、キタサンショウウオなど釧路湿原に生息する希少種の保護を最優先とするよう求めた。
市長「趣旨に賛同」条例制定に意欲
要望書を受け取った鶴間秀典市長は「私たちの思いは要望書と同じだ」と述べ、太陽光発電施設の建設を許可制とする条例の制定に前向きに取り組む考えを示した。市ではすでに、事業者に対して立ち入り禁止措置を通告しており、今後、事業者側の対応が注目される。
釧路市教育委員会も、教育施設として管理する湿原周辺地域への影響を懸念しており、独自に影響調査を実施する方針を打ち出している。
希少生物保護と再生可能エネルギー開発の両立は可能か
釧路湿原周辺では、近年再生可能エネルギーへの需要増を受けて、太陽光発電の設置が相次いでいる。一方で、同地域は特別天然記念物タンチョウの重要な繁殖地であり、絶滅危惧種であるキタサンショウウオの生息域でもある。
太陽光パネルの設置に伴う環境変化がこれら希少種に与える影響について、専門家からは「科学的な知見に基づく十分な影響評価とモニタリングが不可欠」との声が上がっている。
釧路湿原は国際的な自然保護の要所であると同時に、地域経済活性化や地球温暖化対策という側面も持つ。今後、自然環境と再生可能エネルギー推進のバランスをどのように取るか、全国的にも注目を集めるテーマとなりそうだ。
- 釧路市民団体と猛禽類医学研究所がメガソーラー建設中止を要望
- オジロワシなど希少種への影響を懸念
- 鶴間市長は条例制定に前向きな姿勢
- 環境保護と再エネ推進の両立が課題に