2025-08-11 コメント投稿する ▼
茨城・奥久慈で国内屈指の「過酷」レース初開催 南北格差是正と地域振興へ179キロ挑戦
茨城・奥久慈で国内屈指の「過酷」レース初開催 南北格差是正へ県が仕掛ける179キロ挑戦
茨城県北部の奥久慈エリアを舞台に、サイクリングとトレイルランニングを組み合わせた総距離179キロに及ぶサバイバルレースが、10月18日と19日の2日間にわたり初開催される。TX(つくばエクスプレス)開業効果で県南部の都市開発が進む一方、振興が遅れる北部地域の話題づくりと知名度向上を狙った取り組みだ。大井川和彦知事は「国内唯一無二のレースで、過酷さも魅力。県北の魅力発信につなげたい」と意欲を見せる。
大会名は「Okukuji『X』~Ride&Trail~」。県は、景勝地や里山の風景、豊かな食文化といった奥久慈エリアの魅力を「アウトドア資源」として高く評価しながらも、県外への情報発信力に課題を抱えてきた。今回は“過酷”をキーワードに、参加者と同行者に自然景観や地域の食を体感してもらい、交流人口増加と地域振興のきっかけをつくる。
初日は国内屈指の激坂ヒルクライム
初日のサイクリングは、県央・県北を代表する「奥久慈里山ヒルクライムルート」(全長200キロ)の一部を活用。水戸市の「水戸城大手門」を出発し、日本三名瀑の一つ「袋田の滝」(大子町)を目指す125キロのコースだ。獲得標高は2350メートルに達し、終盤には県内最高峰・八溝山(やみぞさん)で6.4キロのタイムトライアルが行われる。
平均勾配は8.5%で、長野の「車坂峠ヒルクライム」(平均勾配8%)を上回る。県担当者は「奥久慈クロスのサイクリングコースは国内屈指の激坂」と胸を張る。登坂力と持久力の両方が問われるコース設定だ。
「この勾配は国内トップレベル」
「景色も楽しめるが脚は容赦なく削られる」
2日目は完走率4割未満の難コース
2日目のトレイルランは距離54キロ、獲得標高2788メートル。県北6市町にまたがる「常陸国ロングトレイル」コースの一部を活用し、袋田の滝を発着点に竜神ダム(常陸太田市)などの名所を巡る。例年5月に同じコースで行われる大会では、完走率が4割を切ることもある難路で、急峻なアップダウンが連続する。
「挑戦する価値のある厳しさ」
「景色に癒やされながらも心が折れそうになる」
総合順位は初日のタイムトライアルと2日目のトレイルランの合計タイムで決定し、上位入賞者には豪華賞品が贈られる予定だ。
地元食材と交流で地域振興
各休憩所では地元食材を活用した名産品が補給食として提供される。地域住民による運営協力や観光案内も予定され、レース参加者と地域との交流を促す。参加者は全体で約800人を見込み、9月末までエントリーを受け付けている。
県はこのイベントを、TX効果で発展する南部と、山間地域が多く振興が課題となる北部との格差、いわゆる「南北問題」是正の一環と位置付ける。過酷さを逆手に取った話題性と、アウトドアスポーツの魅力を組み合わせることで、国内外からの注目を集める狙いだ。
県北の未来を切り開く挑戦
大井川知事は「このレースが県北の自然と文化を世界に発信するきっかけになれば」と期待を寄せる。地域資源の活用とイベントのブランド化が進めば、観光需要の創出や移住促進につながる可能性もある。
奥久慈の険しい山々と美しい風景を舞台にした179キロの挑戦は、参加者にとっても地域にとっても大きな試練であり、同時に新たな希望の扉を開く機会となりそうだ。