古賀友一郎経済産業副大臣は4月7日、群馬県太田市にあるSUBARU(スバル)の矢島工場などを訪れ、自動車関係企業の関係者と意見交換を行った。今回の視察は、トランプ前米政権が導入した自動車関税の強化措置を受け、国内企業がどのような影響を受けるかを把握するのが狙いだ。
スバルは北米市場への輸出が全体の約7割を占めており、今回の米国の政策変更による打撃が特に懸念される企業のひとつ。副大臣の訪問は、そうした現場の声を国の政策に反映させるための動きでもある。
「日本への追加関税は遺憾」副大臣が明言
スバルの早田文昭副社長との冒頭の会談で、古賀副大臣は「日本への追加関税は遺憾だ。適用対象から外すよう、アメリカに対して強く働きかけたい」と語った。これに対し早田副社長は、「政府には交渉を継続していただき、自動車産業全体をしっかり支えてほしい」と要望した。
視察の中では、スバル向け製品が約半分を占める地元の部品メーカー、池田製作所も訪問。関係者は、「関税の影響で北米での販売が鈍れば減産につながり、下請け企業への影響は計り知れない」と、現場ならではの切実な声を語った。
米国の関税強化措置とは
トランプ氏が導入したこの関税政策では、米国が輸入する乗用車に25%の追加関税が課される。2025年4月3日から施行され、日本の自動車メーカーは大きな影響を受け始めている。
特にスバルのように輸出比率の高い企業にとっては、北米市場での販売価格が上がることで競争力を失いかねない。国連の国際貿易センター(ITC)の試算では、日本の対米輸出における損失は最大で170億ドルにのぼる可能性があるという。
国内外から広がる懸念と対応
この関税措置をめぐっては、日本国内だけでなく、欧州各国や韓国なども反発を強めており、各国政府は報復措置の可能性も視野に入れている。貿易摩擦の再燃を懸念する声も広がっており、今後の外交交渉は極めて重要だ。
日本政府も、経産省を中心に関税の適用除外に向けた働きかけを続けている。古賀副大臣の視察は、そうした交渉を後押しする動きの一環と見られる。
今後の見通し
今回の視察を通じて明らかになったのは、現場の危機感と政府への期待の大きさだ。部品供給に携わる中小企業はとくに脆弱であり、仮にスバルが減産を迫られれば、その影響はサプライチェーン全体に波及する。
政府としては、外交交渉と並行して、必要な支援策や減税措置の検討も進めていく必要がある。今後の動向次第では、日本の自動車産業全体のあり方にも大きな影響を与える可能性がある。
- 古賀経産副大臣がスバル矢島工場などを視察
- 米国の25%自動車追加関税への懸念が背景
- スバル副社長「政府の支援に万全を」
- 地元部品メーカーも「減産の影響深刻」と懸念
- 国際貿易センターは日本の損失を最大170億ドルと試算
- 米国の措置に対し、世界各国が反発・報復措置を検討中
- 政府は適用除外交渉を継続、国内対策も急務