2025-09-22 コメント投稿する ▼
佐賀県警DNA鑑定不正130件|「捜査影響なし」説明に残る疑問と身内調査の限界
佐賀県警と佐賀地検は、不正が確認された案件のうち重大事件を含む16件について再鑑定を実施し、結果に大きな食い違いはなく「捜査や公判に影響はなかった」と説明しました。 まず「個人を特定できなかった」という表現は、裏を返せば鑑定の精度や証拠の信頼性が不足していた可能性を示しています。
事件の概要と不正の内容
佐賀県警の科学捜査研究所(科捜研)で勤務していた40代の技術職員が、DNA型鑑定で不正を繰り返していたことが明らかになりました。対象期間は2017年から2024年までの7年以上、不正件数は130件に及びます。実際には鑑定を行っていないのに「鑑定済み」とする虚偽の書類を作成した事例や、鑑定資料を紛失して別の物品を返却した事案も含まれていました。書類の日付改ざんなども行われており、組織ぐるみではなく個人によるものとされていますが、規模の大きさが問題視されています。
「捜査に影響なし」とする説明の疑問
佐賀県警と佐賀地検は、不正が確認された案件のうち重大事件を含む16件について再鑑定を実施し、結果に大きな食い違いはなく「捜査や公判に影響はなかった」と説明しました。さらに124件を再鑑定した結果、8件で当初と異なる結果が出たものの、個人を特定できる段階には至らなかったため影響はないとしています。
しかし、この説明には疑問が残ります。まず「個人を特定できなかった」という表現は、裏を返せば鑑定の精度や証拠の信頼性が不足していた可能性を示しています。また、鑑定を「したように装った」9件については、捜査関係者が本来存在しない証拠を前提に判断していた可能性が否定できません。証拠資料の紛失や劣化によって、再鑑定自体が不可能な事例もありうることから、影響がなかったと断定するのは早計です。
虚偽鑑定が及ぼすリスク
DNA鑑定は刑事事件で極めて重要な証拠とされ、被疑者特定や公判維持に直結します。これが虚偽であった場合、誤認逮捕や不当起訴につながる恐れがあります。鑑定結果に基づいて取り調べの方向性や供述の評価が左右されることも多いため、「鑑定していないのに結果だけ存在する」ことのリスクは極めて大きいといえます。
また、資料の紛失と代替物返却という行為も深刻です。本来証拠能力を持つべき資料が失われてしまえば、将来的に再検証する機会が奪われます。裁判後に新たな証拠が見つかった場合でも、当時の鑑定が信頼できなければ再審請求の根拠が揺らぐ危険性があります。
身内調査の限界と説明責任
今回の調査は県警自身が行っており、第三者機関による独立性のある検証は実施されていません。警察内部の監督体制が十分に機能していなかったことは、7年以上不正を見抜けなかった事実からも明らかです。上司の監督責任についても明確な検証はなされていません。
さらに、職員の実名が公表されず、処分内容も一部しか明らかにされていないことが「不透明だ」との批判を招いています。説明責任を果たすためには、不正が発生した経緯と監督体制の不備を公にし、被疑者や被害者を含めた関係者に適切な情報提供を行う必要があります。
みんなの反応
「影響なしという説明は信じがたい」
「虚偽の鑑定で捜査が進んでいたかもしれないのに軽視している」
「身内調査だけでは不十分。独立した機関で再調査すべき」
「資料の紛失まであるのに影響なしはあり得ない」
「司法の信頼を揺るがす事案だと思う」
今後に必要な改革
この問題を教訓とするためには、外部有識者を含む第三者委員会を設置し、不正の全容と影響を検証することが不可欠です。再鑑定結果や不正の詳細を公開し、関係する被疑者や被告人に周知することも必要です。また、鑑定手続きの厳格化、証拠資料の保存・管理体制の強化、鑑定者への倫理教育の徹底といった制度的改革が求められます。
司法の信頼は透明性と説明責任によって支えられます。今回のような大規模な不正に対して「影響なし」と片付けるだけでは、県民はもちろん、社会全体の信頼を失うことにつながりかねません。