2025-08-08 コメント投稿する ▼
同一労働同一賃金の指針見直しへ 退職金・住居手当明記で待遇格差是正なるか
同一労働同一賃金の指針見直しへ 厚労省、退職金や住居手当の扱いが焦点
厚生労働省は8日、労働政策審議会の部会で「同一労働同一賃金」の指針(ガイドライン)を見直す方針を正式に示した。正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差是正を目的とし、これまで明示されていなかった退職金や住居手当などを指針に盛り込むかが最大の論点となる。年内にも見直しの結論をまとめる見通しだ。
5年ぶりの本格見直し、労使ともに一致
同一労働同一賃金は、パートタイム・有期雇用労働法などに基づき、大企業は2020年、中小企業は2021年から適用されている。施行から5年を迎えるにあたり、制度の実効性を高めるための見直し作業が今年2月から始まっていた。
今回の部会では、労働者側、企業側、有識者の三者が見直しの方向性で大筋合意。労働者側は「現行指針では手当や退職金など重要な項目が抜け落ち、十分な格差是正につながっていない」と強く改善を求めた。一方、企業側からは「制度の趣旨には賛同するが、企業の実情に配慮した段階的導入を」との声も上がった。
現行指針の限界と最高裁判決の影響
現行のガイドラインでは、基本給や賞与については格差の不合理性を例示しているが、住居手当や家族手当といった諸手当については記載がない。このため、現場では待遇差の判断が事業者ごとにばらつき、トラブルの温床となってきた。
厚労省は、過去に待遇差をめぐって争われた最高裁判決も踏まえ、記載の拡充を検討する方針。具体的には退職金、住居手当、通勤手当、福利厚生制度の適用範囲などが俎上に載る可能性が高い。
「非正規にも退職金や手当があって当然」
「企業規模で差がある現状はおかしい」
「手当がない分、賃金格差が広がっている」
「制度の理念と現場の運用にギャップがある」
「企業の負担を理由に後回しにするべきではない」
企業負担と実効性のバランス
課題は、格差是正と企業経営の負担軽減をどう両立させるかだ。企業側は、人件費増による経営圧迫や雇用調整の懸念を訴えている。一方で、非正規雇用の待遇改善は人材確保や離職防止にもつながるため、長期的には企業側にも利益があるとの指摘がある。
厚労省は、制度変更に伴う影響を緩和するため、中小企業向けの助成制度や相談体制の強化も検討する。労使双方が納得できる実効性あるルール作りが求められている。
今後のスケジュール
年内に見直し案を固め、労働政策審議会で最終答申を得た後、2026年度以降の本格運用を目指す。厚労省幹部は「制度理念を形だけにしないため、曖昧さを残さない明確な指針をつくる」と強調した。今回の改定が、単なる文言修正ではなく、現場での待遇改善につながるかが注目される。